チェ・ヨンは王の御前に座ったまま心だけがまた彷徨う。
あの方と、ここにいたことがある。
あの時玉座に上がっていたのは、摂政を務めるあの毒使いだったが。
毒を仕込まれたあの方の解毒薬を求めた。
あの男の膝を折らせ、机に体を叩きつけ。
懐から取り出したチャン侍医に譲られた毒。
蓋を斬る時間も惜しく、この歯で噛みちぎり封を開けて、奴の口に全て注ぎ込み。
明らかに駆け引きの度を越えて、徳興君、あの男だけは本気で殺してやろうと思うた。
それまでなるべく苦しませぬよう一思いに斬って来た敵ばかりだったが、あの男にだけは地獄の苦しみを味わわせてやろうと。
あの方は今、無事だろうか。
何処かで悲しんだり、苦しんだりしていないか。
俺が側にいられぬのに、そんなことになればと思うと。
どこに走れば良いかも分からぬのに、ただ走って迎えに行ってやりたい。
何を言えば良いかも分からぬのに、叫びが喉を突いてしまいそうになる。
そんな己を再び抑え込んで、今は、待つのみ。ただじっと。
今はその部屋の中、王以外は王付き筆頭内官のドチだけが、隅に影のように控えている。
「本当に、久しぶりだ」
その声に我に返り、ヨンは目の前の王に意識を戻す。
王が懐かしそうにチェ・ヨンを見やる。
先程の命はチュンソクに対する、体の良い人払いだったらしい。
「医仙が去られて以来、このように大護軍と話す機会がなかなかなかった」
「王様」
まっすぐに切り込まれ、受け流すこともできず。
チェ・ヨンは王に制止の声を掛けそびれる。
おやめ下さい。
俺はあの方が去ったとは思っていない。
必ず戻ってきます。
もう一度言うと約束した言葉、聞きそびれた返事がある。
チェ・ヨンはそれらを呑み込み頭を下げる。
「奇轍にやられた怪我は、もう良いのか」
「全く問題なく」
「では皇宮にいるのが、辛いのですか」
「そんな事は」
「王妃も心を痛めておる」
「勿体ない仰せ」
「去る前に王妃が、医仙よりとても大切な言葉を教えてもらった、と」
「言葉、ですか」
王は苦笑いを浮かべた。
「実は、寡人もまだ王妃より聞いていないのだ。
北方奪還を遂げた佳き日を迎えた折に教えると」
「は」
何と返して良いか判らず、チェ・ヨンはただもう一度頭を下げた。
あの方のことだ。
また何か突拍子もないことを王妃媽媽にお伝えしていないと良いが。
とにかくよく話す方。あの声で遠くからでもすぐ判る。
チェ・ヨンは頭を下げたまま、苦笑いを浮かべる。
「チェ・ヨン」
王の声に、チェ・ヨンは顔を上げた。
「そなたの友として教えてほしい。今、何がしたいか」
「王様」
「寡人は今、そなたに何ができるか」
「お言葉、お取り下げ下さい」
チェ・ヨンは静かに言った。
「某は王様の命で動くが役目。
したいことはございませぬ。ただ、お命じ下さい」
王は頷いた。
「北方を守りなさい。天穴の、少しでも傍に。
今回の派兵が無事終われば名分が立つ。
まずは双城総監府、いずれ鴨緑江西域を奪還する心算だ。
その際は大護軍チェ・ヨンを、作戦総指揮官に命じる。
ゆくゆく宣旨は出すが、心得ておくように」
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チョナとヨン本当に何も言わなくても通じ合ってる感じがします。
ヨンが北方に居たい事は分かっているから、守れと云う。この先も進軍するからと・・・
良いな、男の友情。憧れます♡
あんまり男臭くないチョナがあぁ、やっぱりこの人も漢なんだなと思う瞬間です。
うぅ~!やっぱり、良いな(≡^∇^≡)
追伸今日は渾身の一枚が貴女を待っているかも♪よろしくです!
また覗きにきます(*゜▽゜ノノ゛☆
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>ののさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
のの様のところで、渾身の一枚を拝見(〃∇〃)
美しいヨンの姿に、見惚れて参りました。
はあ・・・❤
王様は武人と違い、己の才や漢の部分を隠さねば、
命狙われるお立ち場ゆえ、葛藤してそうですが・・・
心は立派に漢として成長しているようです。
今回は、ヨンの方が弱っていてヤバし!
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王様にしかできないすばらしい御命令
これでヨンはもちろん、ヨンをよく知っている人たちは皆さすが王様!と思うことでしょう
ヨンはウンスのことが最優先だから王様の前でもふっと思い出したらウンスだけを考え始めてしまうのですね
ヨン、気づかれないようにねっ
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やはりチョナは、人払いをしたんですね。
愈々、天穴の地を奪還する任に就く事に。
その間にも、何か事は起きるのかしら?
なるべく早く、2人を逢わせて上げたいわ。
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>あみいさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
王命。
チュンソクはヨンを苦しめる王命に、以前は
あれほど腹を立てていました。
そして、向日葵・10での「何らかの配慮」
のセリフ。
いろいろ、リンクしております。
これからも、どこかで誰かが何気なく放った
その一言が、リンクしていくと思います。
最終話までにすべては紐解かれ、
最終話ですべてが腑に落つるように。
祈りながら、書いております
あ、王様は、ヨンが考えている事はお見通しかとw
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>mayuさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
何か起きるかといえば、めちゃめちゃ起きます
@さらん信義world
今回のお話だけでなく、この後の双城総管府の
奪還篇で。
史実からいうと、この頃のチェ・ヨンは
槍で何度突かれようと死ななかった、と
言い伝えがあるとか。
そりゃーウンスオンニを待ってたら
死ぬ事など、出来ませんね。
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ウンスの言葉…「愛」ですね
早く教えて貰えるといいですね王様(^^)
ところで…ウンスが飛ばされた?100年前のお話も出てくるのでしょうか?
さらんさんなら、どんな風に書くのだろうとちょっと気になったもので…sorry
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さらん様、おはようございます❤︎
狂おしいまでの、ヨンの思慕が伝わります。
今、目の前に、ウンスが現れたら、ヨンは何を言葉にし、どんな行動をとってしまうのか?
誰はばからず……❤︎
つい期待してしまいますねぇ(≧∇≦)
物言わぬヨンの熱い想いは、王様にもチュンソクにも痛いほど伝わり、周りが共に痛みを感じるほどに。
ヨンはとても愛されていますね❤︎
ヨンと王様が、王妃媽媽からサランの意味を聴いた時、ふたりはどんな顔をして、どんな想いをだくのでしょう?
私の願望と妄想は底無しです(^∇^)
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>えみりんさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
これは、私もずっと考えていました。
夢の中でも、つれない素振りをする男だと思った
と、向日葵でウンスに言わしめたヨンの
つれない姿を(爆
その時はまた、読んで頂けたら嬉しいです(〃∇〃)
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>夢夢さん
おはようございます❤コメありがとうございます。
そうですね。ヨンのこの想いが結実するのが
私の【向日葵】です。
ただ、ヨンには誠に申し訳ないが
今回、苦しい思いが待っています。
だから、雪が降るのです。季節は巡るから。
全部読まないと。訳判りませんね(苦笑
そして王妃媽媽からサランの意味を聞くのは
王様だけです。それが私の【秋菊】です。
大切な言葉ゆえに媽媽は王様以外に伝えることなく
王様もその意味をヨンに伝えることなく
ただ二人は、ヨンとウンスを想い、涙し、
そして決心を新たにするのです。
こんな風に、全てがパイのように重なっていく
うちの信義。
だから、公開順にとてもこだわってしまいますw