都忘れ | 4

 

 

王様と王妃媽媽、御二人の芝居がようやく終わり、あの方が王妃媽媽の脈診をしている間。
俺は王様と二人、卓を挟んで腰かけていた。

「許せよ、大護軍」
そのお言葉に首を振る。
「お気持ち、ありがたく」
「金でそなたを買おうとは思っておらぬ。民を巻きこむ令を発布するのは心苦しかったが。
さすればそなたにも早々に納得してもらえると思うた」
「おっしゃる通りです」

俺一人の為に城下の民が住まいの売買も貸し借りも移転も禁じられれば、他に何ができよう。
王様は本気でいらっしゃる。そう思ったからこそ、俺とて王様のお話を伺う気になったのだ。

「ただそなたの今までの苦労に報いたかった。
そしてそなたがどれほど戦果を挙げたか、本当のところを医仙にもそなたにも知って欲しかった。
たまには国庫の帳簿を見よ、興味はないだろうが」
王様は俺を真直ぐに見ておっしゃった。
「は」
その御声にただ頭を下げた。

「のう、大護軍」
俺が顔を上げると、王様は扉の向こうの王妃媽媽とあの方の小さな密やかな笑い声を追うように御目を細め
「寡人を恨むか」
そう呟かれた。

真意を図り兼ね口を閉ざす俺に
「こうして医仙は戻り、大護軍の望みが叶った。高麗を強くすることも、民を安心させることも、兵に恩給を出すことも。
元より独立したいとの寡人の願いも叶えてもろうた。
そなたはただ国の為に、民の為に、そして医仙の為にその身と心を犠牲にし、いつでも戦っておるのに。
恐らく、この後も寡人はそなたにその命を下す。幾度も」
王様は眉を顰めた。

「ようやくその手に、気が遠くなる程待ち望んだ医仙を取り戻したと、誰よりも知っておるのにだ」
「王様」
俺は静かにそれを遮った。
「某は王様の兵です。ただお命じ下さい。それで良いのです」
「またそう申すか、そなたは・・・」
王様はそうおっしゃると、溜息を吐いた。

俺を戦に出す度に逡巡される。
何時まで経っても変わられぬ。

一生を懸けて仕えたいと思えるこの主君。
一生を懸けて、それどころか前世も来世も護りたいと思えるあの女人。
そして死地を共に潜り抜けてきた部下と戦友。
それさえあれば武人として、他に何が必要だ。
それらの為に己の命を懸けることに何の不満がある。あるわけがない。

主君も女人も一筋縄ではいかぬが、俺の選んだ方だ。
兎にも角にも俺達の居所は決まるだろう。かなり早々に。

一歩ずつ近づく新たな未来に鼓動が早まっていく。
あなたさえいれば全てがうまくいく。

イムジャ。

俺は、本当に、そう思っていたのです。

 

 

 

 

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20 件のコメント

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    って、何故この言い回し?
    あぁ、この後ドラマが待ってるんですね。
    さて、都忘れ・・・どんなドラマですかね。
    楽しみです♪
    また楽しく覗きに来ます(*^▽^*)

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    思って【いた】…
    最後の最後にぐわっと心臓を掴まれた気持ちです
    今回のお話は山越えだと覚悟して読んでますが
    構えていて尚、ぎょっとさせる技にもうお手上げです
    しかも一行ですらない。数文字ですもんね。
    冷や水を浴びるとは正にこんな時の気持ちでしょうか…ブルッとしております

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    『俺は、本当に、そう思っていたのです。』
    って、なんか不吉な余韻を残す言葉?
    お願いします。ヨンからウンスを、ウンスからヨンを奪わないでくださいね(>.<)

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    ここで、ここで終わるの?と、多分皆様、絶叫しているでしょう。はい、私もしました。暗雲立ち込める雰囲気に、溜息をつきつつ、それでも続きが楽しみで、かなりのМになってるような…。王様のお心遣いが、ヨンと臣下の付き合いではない。お互い、自分だけの一人の女人を愛する男の気持ちを理解した、男同士の友情が感じられました。王様はお幸せだけど、ヨンは…。はあ、見守りませう。連休お休みになりますように。

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    何か含みがありすぎて、気持ちが落ち着きません。
    折角屋敷の問題は解決したのに、何があるというの?
    ウンスの見た夢が、正に予兆ですか?
    それとも、ウンスのやりたい事が、ヨンには承諾できかねる事とか?
    気になる~~~| 壁 |д・)

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    王はヨンに初めて会った時に「その心が欲しい」と願った。
    ヨンは、王に対して、「関心すらない」と思っていた。
    そんなふたりが長い歳月をかけ、一生を懸けて仕えたいと思える、思われる関係になったのですね。
    武士として、大切にしたいと思える主君と部下や戦友たち。一人の男として、何物にも代えがたく護り抜きたい人ウンス。自分で選び、命を懸ける事に不満などなく、ウンスさえいれば全て上手くいくと思っていたのに、何がこの後、その志が伝わらない事があるのでしょうね。

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    さらん様、こんばんは❤︎
    チョナとヨンが、ふたりで話すシーンは、重い雰囲気の時も多々有りましたが、私は大好きでした。
    お互いがお互いを誰よりも信頼しているのは勿論ですが、今回同様、お互いの愛しいひとだけをそれぞれに思い浮かべ見つめているのですよね。
    口の片端を上げて、ちょっと皮肉っぽく見えるチョナの笑い方、改めて好きなんだと自分で再認識いたしました。
    ヨンのため息、喉仏が上下するさま、ほんの少しだけ鼻で笑っている様に思える笑い方、殺人的なイケメンぶり、そして大好きな、あの声….❤︎
    それなのに、最後の語りが気になって仕方有りません。

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    さ、さらんさん、最後の一文が変でございますよ!?
    こんな不安を煽りまくりで止められたら怖い…
    何が起こるというのでしょうか?
    あ、でもこの前の一服処はこの章の後になるのだから大丈夫?もう、わからないわ~

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    >えみりんさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    いえいえ、大したことではないですよ。
    ただ若干、小石を投げてみましたww
    大丈夫ーな、はず( ̄▽+ ̄*)です。

  • SECRET: 0
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    >ののさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    もう、軽く。軽く、波乱なだけですw
    まだ時差ボケが取れないまま、変な時間に仕事&
    書き物しています・・・
    週末にはトクマニーーー(まだ言ってる)

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    >chamiさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    大丈夫です。
    この【都忘れ】を超え、鬼ごっこをして
    そして春、二人で巴巽村に行ってますから。
    続くのですから。
    ただ、二人が越えなければいけない、
    寂しいよー会いたかったよーだけではない
    現実直面話ですww

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    >kumiさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    大丈夫ですよ(またこれで申し訳ありませぬ
    奪いません奪いません、いえ、奪おうとしても無理ですww
    もう、あんな運命の二人ですとぶっちゃけておいて
    奪ったら、それは詐欺というものヾ(@°▽°@)ノ

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    >チェヨン1さん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    安定度は、王様&媽媽の方が高いですね。
    環境も境遇も生きる時代も同じであるだけ、
    そして夫婦歴も長いですからww
    連休の休み獲得の為に、今日は頑張らねば。
    そして連休中は、溜まったあちらのお話を進めねば・・・!と
    やや前のめりの金曜日ですw

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    >mayuさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    もう、ほんとに、大丈夫なのです。
    ただ単に、ヨンが、ウンスが、頑張り過ぎたねーという
    それだけの、お話ですww
    こくちょんはじませよヾ(@°▽°@)ノ

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    >ままちゃんさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    はい。
    ただ、ヨンもウンスも、頑張りすぎたねーという
    それだけのお話なのですww
    ですから、もう鬼ごっこも巴巽村に行くことも
    先にお伝えしておいたほうが良いな、と。
    時系列が前後したので、分かりにくかったですが
    大丈夫なのですよ❤

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    >夢夢さん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    王様のあの、天真爛漫とは程遠い笑い方。
    ぐっときます。どんな風に今まで生きてきたか
    その心を覗いてみたくなりますが、
    そんな事したら、いつまでも本編が進まぬではないかと
    ぐっとこらえる私ですww
    最後の一言は、ほんの小さな小石投入です。
    人生のスパイス?あれ、違う?

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    >ポチッとなさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    もう、おうちはサクッと決まります。
    でも今回それを書いてしまうとえらく長くなるので
    宅については、この後別話で書きましょうか、といったところですww
    いやはや。全く困ったカップルです(゚ー゚;

  • SECRET: 0
    PASS:
    >あみいさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    そうです、だいじょぶですo(〃^▽^〃)o
    この【都忘れ】があって、鬼ごっこがあって
    そして巴巽村に行くのですから、もう。
    皆様は、二人の春までの道を、既に読んでいらっしゃいますから
    このお話を、あー(゚_゚i)、くらいで
    気楽にお読みくださいませ❤

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