或日、迂達赤 | 蒼天(前篇)

 

 

【 蒼天 】

 

 

王様。聖君に、お成り下さい。

─── 隊長、

 

******

 

何者かが俺達一行を追ってきたのは、副隊長にも俺にも分かっていた。
それがえらい人数で、おまけに府院君の私兵とは予想もしなかったが。
皇宮の隊長よりの連絡でそれを知った時にはもう既に、追手は目と鼻の先まで迫っていた。

ここから先は峠を越える。
それが隊長と副隊長の作戦だった。
馬車は畦道に乗り捨てると決断した副隊長は畦道で馬車を止め、王様と王妃媽媽に降りて頂く。

そこにテマンが駆け戻り、追手の人数は五十人程と、焦ったように報告をする。

「山賊にしては、数が多すぎます。恐らく扮装した刺客」
副隊長のその予測は、おそらく当たっている。

「逃げ切れるか」
そう問われる王様に、副隊長が
「挟み撃ちに合えば、打つ手はありませぬ」
正直にそう告げる。現在王様についている迂達赤は、俺達甲組を含め二十名足らずだけだ。

「防御陣で時間を稼ぎます」
それしかないと、俺も頷く。

副隊長。隊長が動くまで、どうにか王様と王妃媽媽を護って下さい。
それまでの時間稼ぎはお任せを。
別働で周囲を探索していたトクマンが駆け戻り
「副隊長、上に、水車小屋が」
と報告の声を上げる。

誂えたような場所だ。
逃げ延びるために隠れるには打ってつけと、敵が思い込んでくれれば良いが。

「チュソカ」
「は」
その声に王様も王妃媽媽も、副隊長が次に何を言うかと不安そうに揺れる目で俺をご覧になる。

ここに十人しか置いていけぬと副隊長に言われた時。
俺には状況も、それを言わねばならぬ副隊長の気持ちも、痛いほどによく分かっていた。
分かっているから副隊長、自分を責める事など何一つない。
だからそんな顔をしないで下さい。

「は。早くお行き下さい」
俺は微笑んで顎を引き頷いた。その俺をトクマンが見つめる。

トクマニ、お前も。もう一端の迂達赤だ。
そのような泣きそうな、情けない顔をするな。

「甲組!」
「は!!」
俺の号令に甲組の皆が呼応する。

護りが命尽きるまで続くことは、俺も、皆も、魂にしみて分かっている。
敵がどこから向かって来るか。
そこから、どのように守るか。
己の頭が答えるより先に体が動くよう俺達を鍛えてくれたのは、隊長でありそして副隊長だ。

副隊長。動きやすいように此処で一人でも多く仕留めておく。少しでも安全に帰って下さい。
その間に必ず隊長が、どうにかしてくれる。

王様と王妃媽媽が峠に向かう畦道を、振り返りながら足早に遠ざかる後姿を、頭を下げて見送った。

秋の空は雲高く、抜ける程に蒼い。

副隊長。トルベ。トクマニ。テマナ。
会えて良かった。

そして隊長。
あなたに出会えて、俺は最高に。

一息置いて、甲組の面々に振り返る。
「組頭」
皆がそう言ってただ頷く。
俺はあの時の隊長程、こいつらにとって信頼できる長だっただろうか。

俺のせいで、命を落とすかもしれん。すまんな。

あの時の隊長程、俺はこいつらを護れるだろうか。

一人でも多くの奴を、出来るだけ無事に開京に戻してやりたい。

「行きましょう、組頭」
「俺は頭と一緒ならどこでも行きます」
「俺達が守ります」
こいつらのかける言葉に、一人一人の目を見る。

「最後まで、共に生きる」
俺の一言に、九つの頭が頷いた。

「行くぞ」
その一言を最後に、全員が山道を駆け上った。

 

 

 

 

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27 件のコメント

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    こんばんは。
    読み始めた直後に、『あぁ…。チュソカのことだ…』 と思いました。
    誠実で実直で 隊長や副隊長が大好きで。
    チュソカの最後には、ワンワン泣きました。
    今も 鳥肌が立ってしまいます。
    永遠にウダルチの一員ですよね。
    もう一度 チュソカに逢えて嬉しく思います。
    ありがとうございました!

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    あぁ~!チュソク!何であの時君は笑ったの?
    全身で隊長を信頼して、部下を信頼して、最後まで、振り返らず前を見据えていた貴方に私は本当に感動を覚えました!
    彼の事を書いてくれたさらんさんに感謝です!
    うわぁぁぁぁん。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。うれし泣きです♡

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    この場面は思い出すと辛くて涙が…
    なのにこんなにチュソクの心の声を聞いてしまうと私はもうダメです。
    でもさらんさんがチュソクの最後の声を教えてくださるなら感謝します。だってあの時は私は聴けなかったから…

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    さらん様、こんばんは❤︎
    チュソク、私も好きです。
    悲しいけれど、一番チュソクを素敵だと感じた回でもありました。(u_u)
    ヨンを心から慕っていましたね。
    ヨンと迂達赤のやり取りは、どれも楽しく、何よりヨンが素敵で……❤︎
    さらん様の世界でチュソクやトルベに再会出来て幸せです\(//∇//)\
    これから海外でのお仕事との事。
    気を付けて行って来て下さいね‼︎
    体調など崩されないかと心配です。
    さらん様ひとりの身体ではありませんので❤︎

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    これはあきません。。゚(゚´Д`゚)゚。
    涙が落ちるのを止められへん。
    心情が映像と重なり合って
    死んだらアカンよって、覚悟を決めたチュソクに呟きながら観たシーンだもの。
    はぁ溢れる溢れる心デス

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    昨日は魂をもっていかれるような感動をありがとうこざいました!
    まだ感動醒めやらず…といったところですが。更新ありがとうごさいます。
    あ~あのシーンですね。チュソクの‥
    ウダルチ達は皆それぞれ個性があって、それに見合った見せ場がありましたですね。チュソクは男気溢れ、忠誠心の強い、情のある男であったかと‥
    このお話は私の中では多分ヤバいだろうかと…後編は号泣覚悟で挑ませて頂きます!
    あの小屋の中でヨンがチュソクに云いました「ミアナダ‥」あの時のヨンの表情、猛烈にイケてました~♪
    さらん様、出張されるとか…何事もなく無事のご帰還心からお待ち致しております。
    いってらっしゃいませ(*^o^*)幸運を!

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    思い出します(T_T)
    ものすご~く泣いたシーンです!
    チュソクの最後の顔が忘れられない…
    後編がどうなるのか、期待と不安でドキドキです(´・Д・)」

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    >kumiさん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    うわー、やはりですか・・・
    開京に帰還し、チャン侍医&ムン・チフ隊長とは
    あのような形とはいえ再会叶ったものの
    肝心のチュソク&トルベが!と思い、
    未来への第一歩として、書いていたのですが・・・
    明日から留守の身、皆様への配慮も行き届かず
    辛いお気持ちのままになったら、本当に申し訳ありませぬ・・・

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    >ゆかこうさん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    勿論、迂達赤です!
    私の迂達赤は、あくまで副隊長のチュンソク
    (みあなだー隊長ではないのだー
    甲組組頭チュソカ、槍名人トルベ、
    子犬のテマナに天然トクマニです。
    それ以外は、チュソク&トルベが抜けて
    いろいろ新キャラ入れてみましたが、
    やはり、うーんでした。筆力不足&愛情不足です。
    これは悲しいですが、元気なころのチュソカも、
    いつかまた書きたいなーと。
    まずはヨンを前進させるため、このお話ですが・・・
    お許し下さいませ(ノ_-。)

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    >ののさん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    あの、最期の微笑み。
    二度と逢えぬ大切な守り人の王様と媽媽、
    信頼する仲間の背中を、凛々しく頭を下げ
    見送った、あのチュソクです。
    最終パートは、ヨン。こちらでも、語ります。
    本来は王様が出てきてもアウトですが
    今回はチュソクに免じ、ゲスト出演として迂達赤へ。
    これで明日UPが終われば、その後は
    ヨン&ウンスの新生活の予定だったのですが
    チュソクと再会させたいばかりにUPした
    このお話・・・やばいです、響いてます(ノ_-。)
    一服入れないと・・・っっ!

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    >あみいさん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    辛いですね。私も思った以上に響いております。
    明日、飛行機乗り遅れたらどうする?的な
    結構なとこまで・・・ううう(ノ_-。)
    私も辛くて、あそこはきついです。
    書かずにとも思いましたが、ヨンを歩かせるには
    此処も必要と。心は鬼監督です。

  • SECRET: 0
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    >夢夢さん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    チュソク、散る。
    確かに、一番の見せ場でもありました。
    チュソクの、良いところ、忠義とか信頼が
    余すところなく、描かれていました。
    でもそれでも生きててほしかった。
    トルベもそうです。ヨンの立ち直る
    きっかけにはなりましたが、生きててほしかった。
    うーです・°・(ノД`)・°・
    はいっ!気を付けて行って参ります❤
    一人の体ではないですから・・・キャ(*v.v)。
    MADE IN CAのヨン(そしてタン)が
    どうなるか、ドキワクです❤❤
    お話はガッツリ練って格納したので
    手直しなくUP出来そうです。嬉しい嬉しい❤
    少なくなるかもで、申し訳ありません・・・(゚ー゚;

  • SECRET: 0
    PASS:
    >üKöさん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    そうですよね。
    確かに素敵です、でも素敵じゃなくていいから
    生きててほしかったです。チュソカもトルベも。
    私も、溢れます・・・。゚(T^T)゚。

  • SECRET: 0
    PASS:
    >わいやーさん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    ミアナダ画像、ポチでご覧いただけますか?
    あの無駄なほどに溢れるヨンの優しさと色気。
    監督!なぜそこでそれほどダダ漏れを!と
    若干不審に思うほどでしたw
    はい、行って参ります❤ありがとうございます
    (●´ω`●)ゞ

  • SECRET: 0
    PASS:
    チュソク 凄い人です!
    どんな気持ちだったか
    見ている方が切なくて・・・
    生き残って欲しかった。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
    チュソクのような仲間がいるから
    ヨンは、頑張り続けるんですよねぇ。
    迂達赤の一人もかけて欲しくない。
    大切な 大事な仲間・家族ですもの。
    本当に切ない・°・(ノД`)・°・

  • SECRET: 0
    PASS:
    チュンソクの、決断する時の苦渋に満ちた顔が、今でも忘れられません。
    武人って、何処の国でも当然の様に、上に立つ者に命を捧げられる。
    近衛は、王と言うより、信頼に足る隊長のヨンにですけどね。
    それが、凄いなと思います。私なら、きっと怖くて逃げ出してるから(((( ;°Д°))))

  • SECRET: 0
    PASS:
    >ルカさん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    開京に戻り、チャン侍医、ムン・チフ隊長とは
    あのように再会できたのに
    肝心のトルベとチュソクがまだではないか!と思い
    未来に進むため、書いては見ましたが
    やはり辛すぎ、二話はいけません。
    まずは兄貴分、チュソクより。
    漢気と忠義に溢れる素晴らしき武人でした。
    ヨンとの名シーン「みあなだ」場面
    もう・・・ポチ画だけでも・・・

  • SECRET: 0
    PASS:
    こんばんは 初めてコメしてます。
    泣きました。 あの場面が思い出してしまいました。
    ヨン隊長が俺の為に命を落とすやも すまぬ
    あの時は本当にジーンとしまいました。
    後篇 待ってます。

  • SECRET: 0
    PASS:
    チュソク、心が痛くなるそれでいて男義の溢れるところですね。あの小屋でのヨンとのやり取り、ここから繋がる隊長との絆。涙なくして見る事は出来ません。ウダルチであるから、王の為、王妃の為、仲間の為、命の限り戦ったのですよね。
    明日から出張なのですね。体調等、気をつけて行って来てくださいね。元気なお帰りをお待ちしています。

  • SECRET: 0
    PASS:
    >みっちゃんさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    チュソクは、あの話の中で本当に
    ある種の散り際の良さを見せてくれましたが
    かっこよくなくていいから、と思います。
    さすがに迂達赤を書くにあたり、これを避けるわけには行かず、書きはしましたが
    うー。やはり・°・(ノД`)・°・
    御口直しに、明日は明るいお話を、旅先よりw

  • SECRET: 0
    PASS:
    >mayuさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    武人、今は軍人ですが本当にどっか一本
    良くも悪くも、切れていないと出来ないですね。
    そして、その結束力の強さ。
    確かに、普通の覚悟ではできないと思います。
    しかしやはり書くのは辛いものが(ノ_-。)

  • SECRET: 0
    PASS:
    >みよちゃんさん
    おはようございます❤初コメありがとうございます。
    ああっやはり泣いてしまわれましたか・・・
    避けて通れぬヨンの成長記として
    前に進むために書きましたが、ううう。
    申し訳ありませんでした・・・
    せめてポチ画で、あの みあなだ場面での
    ヨンの無駄に素敵な色気と優しい顔を
    思い出して頂ければ・・・(ノ_-。)

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    PASS:
    >ままちゃんさん
    おはようございます❤コメありがとうございます。
    もうあの微笑み、そして最後に一行を
    見送った、顔を上げたシーンからのチュソカ
    素敵すぎでヤバいです・・・
    漢ですね。ヨンと、仲間への信頼でのみ
    戦ったのでしょう(ノ_-。)
    はいっ❤行って参ります。楽しみはすでに
    現地で書くお話の事になっていますがww
    帰国すれば、別ブログもUP出来そうです。
    ああ、愉しみです(〃∇〃)

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    この辺りのお話は、実は私…ドラマでも観るのが辛く…(´д`|||)
    アン.ジェと合流するまで倍速で観たり、片目を瞑ったりしているんです…(*ToT)
    だって~~ドラマじゃチュソクに良いこと一つもなかったやん~(/_;)
    思い人もいたかも…とか思うと可哀想で可哀想で…( ノД`)…
    決してタイプではないですが(笑)こういう真面目な男気ある人は大好きです。
    よって朝から号泣しました。
    さ、現実戻って会社いこ…(´・ω・`)

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    >みやびさんさん
    こんばんは❤コメありがとうございます。
    そうですね、真面目で漢気溢れて
    忠義に溢れる男、チュソカ。
    はあ。書いててかなり切ないです。

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    信儀で見たときも、一人で嘘だー!と叫んでました(;´ρ`)
    チュソクも含めてあの五人はヨンとずっと一緒って思っていたので、誰一人欠けるなんて想像出来ませんでした(´・ω・`)
    蒼天見て、その時の気持ちを思い出しました(´;ω;`)

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