窓の外、凍りついた木々の影だけが静かに並ぶ。
大護軍は今日も食べないのか。
テマンは厨房に行くと、顔馴染みの担当兵に握り飯を作るよう頼んだ。
腹が減るのはだめだ。どんどん悪い方に考える。
体が弱れば気持ちも弱る。俺はその怖さを知ってる。
大護軍に飯を喰わせないと。
テマンは焦る気持ちで、その場で足踏みする。
早く、飯だ。
「テヒ、お前が作ってくれ」
忙しそうなその兵が、近くにいたあの女に声を掛ける。
テマンがその声の先を見ると、あの女が頷いて飯櫃から炊いた飯を出した。
「やめろ！」
テマンが思わず声を荒げた。女の手が止まる。
丸くなった目が、テマンを見つめる。
「お前の触った飯はいらない」
テマンはそう言うと、そのまま炊事場を出た。
大護軍の私室に行く前に外で飯を調達しようと、兵舎の門に向かう。
どこか一件くらいは飯屋が空いているだろう。
誰だって雨でも雪でも、腹が減れば死ぬんだから。
急げと駆け出しそうになった時
「待って」
と、後ろから声が掛かった。
テマンは足を止めたが、振り向きはしなかった。
足音がようやくテマンの背後に追いつく。
歩きづらい雪の中を急いだのだろう。息遣いが荒い。
そんなに急いで、何を言いに来た。
「なんだよ」
背中を向けたままそう問う。顔も見たくない。
「あんたの事は知らない。あんたも私を知らない。
私が欲しいのは、チェ・ヨンの心だけ。邪魔はしないで」
全く腹が立つ。大護軍の心が欲しいだと？
笑わせるな。お前のものになんかなるものか。
「お前の事を知る必要はない。俺は大護軍を護る」
「私に会って、チェ・ヨンも動揺してるのね。
もっと苦しめばいい。メヒョニの半分でも。
私は諦めない。私が一緒にいる限り、チェ・ヨンは絶対にメヒョニを忘れられない」
テマンは苛々とその言葉を遮った。
「お前の姉さんじゃない。
大護軍が忘れられないのは、他の人の事だ」
「･･･他の人？」
隠そうとしても動揺したのか。女の声が少し震えた。
テマンは初めて女を振り向いた。
「そうだ。大護軍は、きっと待ってる。
だから放って置いてくれ」
いつもなら大護軍以外の人間には思っていることの半分も口にできないテマンだが、今回ばかりはいつもと違う。
大護軍の様子がおかしい。
心配で、こっちもどうにかなりそうだ。
その気持ちがテマンを饒舌にした。
「･･･何よ、それ。メヒョニはたった一人で首をくくって死んだのに。
それなのに自分は一人どころか、他の女と幸せになろうとしてるの？
そんなの、絶対に駄目！！」
女が高い声でそう叫ぶ。
「ふざけるな！！」
テマンの腹から、太い怒鳴り声が上がった。
我慢も限界だ。大護軍の知り合いでさえなければ、このまま手刀で斬り掛かるところだ。
「大護軍は誰よりも幸せになんなきゃいけないんだよ！何でお前の許しがいるんだ？
お前に大護軍の何が分かるんだよ！いったい何様のつもりだ！！」
言い放つとテマンは雪の中を駆けだした。
まずは飯。大護軍に飯だ。
楽しんで頂けた時はポチっと頂けたら嬉しいです。
今日のクリック ありがとうございます。
SECRET: 0
PASS:
テヒは心を囚われたまま動けないでいるのですね
今はテマンがヨンの傍にいる事が、何より心強いです。
テヒも早く前を向いて歩き出せます様に・・・
SECRET: 0
PASS:
事実を知らないくせに恨む女、事情を知らなくとも信じて守るテマン
テマンの気持ちが優っていてくれて嬉しいです！
テマンにとってヨンがテマンの生きる世界ですから、その為に必死になるのは当然ですよね
テマン、おばちゃんも応援していますよ!!
SECRET: 0
PASS:
そうだ！そうだ！と思わず言い、主人が気味悪そうに私をみてました。
でも、テヒさんも可哀想ですよね。私は心が狭いので、どっか行っちゃえ！とか思いますけど、チェ・ヨンさんとサランさんは、テヒさんの心も救いそうですね
SECRET: 0
PASS:
テマン！かっこよすぎます。
ヨンの事が一番わかるのは、テマンしかいない。あなたが頼りです！
SECRET: 0
PASS:
どうなるの？
テヒの気持ちもわかる！(。>д<)
テマンさん、ヨンとテヒの心の闇を救って
あげて下さい(ノ_＜。)
SECRET: 0
PASS:
そうだ！まずは飯だ(笑)
それにしても…
イラッとするなぁ～この女…(￣∩￣#
テマン…ヨンをしっかり護って～
SECRET: 0
PASS:
テマンの言葉にスッキリ（￣▽￣）=３
ヨンはどうした？
何故食べられないの？
テヒが居るから？
大護軍として、国境も護らなければならないし、何時までも揺れていられないよ。
しっかりして、ヨン(ﾟ＿ﾟi)
炊事係も察しなさい、早く追い出しちゃえばいいのに。。。(￣＾￣)
SECRET: 0
PASS:
今日、さらんさんの世界に浸りたく『迷迭香』と『蛍袋』を読み返していました。
兵糧攻め(笑)に遭って、ヨンに魚を貰ったテマン。
ヒドに「退却だ！」と言い張ったテマン。
……しみじみ……腹の底から声を出してテヒに怒鳴ったテマンがテマン過ぎて……姉さん泣けてきます(だから誰ww)
そうか、テヒはヨンの噂を耳にしてはいても、ウンスの存在は知らなかったのですね。
迂達赤隊長だったヨンが妖魔、もとい医仙に骨抜きだった噂は千里を駆けて民の知るところだと思っていたのですが早とちりでした。
初雪が降ってから、もうどれくらい経ったのでしょうか。
春はまだ遠いのでしょうね。
もう、テマンの頭をわしゃわしゃしたい(//_//)
SECRET: 0
PASS:
いつもヨンの事だけは、野生の感が働くテマン。あの直向きさが大好きです。ウンスが帰ってくるまで、どうか、ヨンの心を護ってあげて欲しいです。
SECRET: 0
PASS:
さらん様、こんばんは❤︎
不思議ですねえ。
実は、ここ数話はヨンが全く出てきていないんですよね‼︎
それなのに、ヨンの心情や様子が見えて来るんです。
さらん様ったら、さすがですわん❤︎
今回のテマナは、頼もしいです。
吃音も出る事無く、堂々と大将軍を守っているではありませんか♪( ´▽｀)
ホントにテマナは良い子です。
そして、ヨンの事が、今更ながら大好きで、良く解っていますね。
ヨンとウンスが一緒に居るのを嬉しそうに少し離れて見てた姿を思い出します。
それだけで、少しだけホンワカ気分＼(^o^)／
そろそろ1枚脱ごうかな❤︎
SECRET: 0
PASS:
この調子で隊長を守って下さいね。
テヒさん、ちょっと病んでますね。
姉の死を受け入れられず、代償行為をヨンに求めているのでしょうか。
7年間のヨンの苦しみを知らないからでしょうけど
愛する人を亡くした苦しみはヨンもテヒさんも変わらないのに…
テヒさんにも早く救いが訪れるといいですね。
サランさん、いつも素敵なお話ありがとうございます＾＾
SECRET: 0
PASS:
凄くせつない…ヨンもテヒもだけど、テマナが…
テマナ…ありがとうといい子、いい子してあげたい
頑張れテマン(T^T)
SECRET: 0
PASS:
これは、きっとテヒ、ヨンに惚れたんだ、間違いない、それをメヒのせいにしてこじつけてるんだ，たぶん？？？なんてごめんなさい(・_・;)
余りにヨンが可哀想で私もこじつけました。
早く春が訪れますように、、、
SECRET: 0
PASS:
＞ハルさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
全てが動き出す一言を、テマナは言いました。
ここから、どうなるか。
テヒの動きも･･･
楽しんで頂けたら嬉しいです。
SECRET: 0
PASS:
＞あみいさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
まさに、おっしゃるとおりです。
伝わって嬉しいです。
今、予定になかったこちらのカップル話を
練り練りしています。
週末から公開できたらうれしいな･･･
あみいさまや皆様の応援を背に、
テマナ、もうひと踏ん張りしますо(ж＞▽＜)ｙ ☆
SECRET: 0
PASS:
＞はるるさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
はるる様ご夫婦の絵が浮かびました。
可愛い❤
ヨンの大鉈も、もうすぐ振るわれます。
最初は浮上しきれない、あの頃のヨンですが
いやあ、愛の力とは恐ろしや。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
あ、旦那様のいらっしゃらぬところで(〃∇〃)
SECRET: 0
PASS:
＞ko_sayuさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
ヨンの武士DNAの後継者テマナ。
あの背をみて育ってきた男の子は、立派に
若武者になりつつあります。
頼りにしてやってください(o^-')b
SECRET: 0
PASS:
＞モモさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
テマナはもう、裏表のない子ですから、
お前を知る必要はないそうですｗｗ
ただ、バタフライエフェクト
何処かの蝶の羽ばたきが、離れた処で嵐を
巻き起こす、やも。
その一言を放った、今日のテマナです。
SECRET: 0
PASS:
＞ぽんたさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
確かに、イラっとします。
こればかりはもう、究極の自己中V.S究極の献身
その対極の諍いゆえ。
テマナは今回、もうひと踏ん張りします(o^-')b
SECRET: 0
PASS:
＞mayuさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
断食ヨン。デトックスで毒抜き中？
雪が降っていなければ、臨戦下の国境、
屁が出るまで喰わずに戦えるかと、
あの美しい顔で言い切った凛々しい隊長ですから
しっかり食べるとは思いますが･･･ｗ
SECRET: 0
PASS:
＞みゅうさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
テマナのあの行動は、全てヨンから学んでいます。
何故飯を出すのか。なぜ信じるのか。
今日、その究極の行動が発動する予定です
(〃∇〃)
伝わるかなー伝わると良いなー
テマナ、わしゃしゃしゃ！
SECRET: 0
PASS:
＞ままちゃんさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
テマナならば、きっと。
ヨンにとり、唯一にして最強の私兵です。
信じてあげて下さい。大丈夫。
SECRET: 0
PASS:
＞夢夢さん
おはようございます❤コメありがとうございます。
私の中で、テマナは最終回のトクマニと
飯屋で座っていた、あのテマナ、
吃音もなく、まるでリトルヨンのように
「しっかりと、確実に、守れ」と言った
あの凛々しい若武者に近づいています。
春遠からじ。もう少しの間、雪が解けるまで。
SECRET: 0
PASS:
＞ichigoさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
愛する人を亡くした時、その状況が
自分の納得や理解の可能な範疇を超えていた時、
どうするだろうな、と。
そこにその人の人間性が見える気がします。
誰も悪くない。だけど皆が切ない。
こちらこそ、いつもお読み頂けて嬉しいです。
春までもう少し、お付き合いください❤
SECRET: 0
PASS:
＞ゆりりんさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
やはりテマナは頭わしゃしゃしゃキャラ。
犬のように、弟のように、
可愛すぎて、ついこねくり回してしまいますｗ
SECRET: 0
PASS:
＞nonさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
雪が降っても、嵐が吹いても、
変わらないものがあります。だから大丈夫です。
non様の信義への、ヨンへの直観を、信じてみて下さい❤
SECRET: 0
PASS:
テマナ＊えらーい!たのもしい！
ウンスが帰って来るまでヨンを支えてあげて…
SECRET: 0
PASS:
＞まあちゃんさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
ガッツリ護ります。護らせます。
最後の波乱が過ぎ去るまで(o^-')b
しかし結局、ヨンの判断なのです。
問題は、全て、最終的にヨンが解決するしかなく。
ここで逃げるような男ではないので、大丈夫です。
何だかこのお話のコメ返では、まあちゃんさまにも皆様にも
「大丈夫です」ばかりですが･･･(*´Д｀)=з
でも大丈夫です❤