2014.08.21 ■迷迭香【長編】さらん

迷迭香｜ 12

ウンスは夢を見ていた。

静かで、きらきらしていて、温かい所。
ここはどこだろう。なんて気持ちいい場所。

あの人が静かに座っている。
お寺で見る仏像の･･･ほらそうだ、蓮華座。
ヨガをやっている同僚が
「ただ座るだけなのに、凄く難しいのよ」
って言ってたっけ。思い出したわ。

あの人、股関節も膝関節も柔らかいのね。
夢の中なのに、おかしな所で納得する。

ふと、あの人が目を開ける。
私を見て少しびっくりしてる。
私が小さく手を振ると、とても嬉しそうな顔をする。
私は静かにあの人の傍に寄る。

「よく見つけましたね」
あの人が優しい声で言う。

「あなたの事ならどこにいても見つける自信があるのよ。
前みたいに隠れようとしても駄目よ。懐かしいわね、キチョルの屋敷で。覚えてる？」
あの人が懐かしそうに笑う。やっぱり覚えているんだ。

「イムジャは綺麗な蒼い着物を着ていた。天女のようでした」
そういうあの人の姿が、少し揺れる。

「すぐに戻ります。眠っていてください」

分かった。待ってるから、すぐ来てね。
そう言ったはずなのに、上手く口が回らない気がする。
私は笑って頷いた。伝わったみたい。

「眠って」
最後に優しいその声を聞いて、夢の中なのに私はもう一度意識を手放した。

*******

戻った俺がその頬をそっと撫でる。
この方は吸い寄せられるよう俺へと寝返りを打ち、眠っているのに微笑んで
「お帰り」
と呟いた。

何故こんなことが起きるのだ。
その寝顔を見つめながら、ふと考える。

俺の無意識にまでも潜り込むほどとは。

無我の境地に、たとえどんなに慕っておる相手でも、他の者が立ち入るようなことがあるのか。
十の齢より運気調息を行ってきて、こんなことが起きたのは初めてだ。
己の体にこれほど気が満ちたことも。

この方と出会って以来、初めてのことばかりが起きる。
なのにこの懐かしさは何だ。
温かい雨を浴びたように、心が安らぐのは何故だ。

堂々巡りの思いを断ち切るよう、軽く頭を振った。
この静かな夜には他の事は何も考えず、この方の眠りを守りたいから。

「眠って」

俺はもう一度、その耳許に囁いた。

楽しんで頂けた時はポチっと頂けたら嬉しいです。
今日のクリック　ありがとうございます。

SECRET: 0
PASS:
後半戦のスタートは甘め…
でも互いに思いあうウンスとヨンが素敵に描かれていて素敵♪でも静かなスタートだから、次回は波乱必死？
明日の朝が楽しみでもあり､怖くもあります。

RECOMMENDこちらの記事も人気です。