体中が痛い。
目が開けられない。
焦げるような匂いが、あたりに充満している。
・・・何が起きたんだっけ。
ウンスは閉じた目の下で記憶を辿る。
最後は馬が滑って態勢が崩れて、そうだ、落馬したんだ。
ああ。
あの人は?あの人は無事だろうか?
「・・・テ、ジャン」
あの人に何かあったらどうしよう。
「隊長・・・」
呼ぶというには余りに弱々しかったけれど、その声に私の手がぎゅっと握られたのを感じた。
この世界で、この手しか知らない。
「・・・気がつきましたか」
私はどうにか目を開ける。
山の中だとばかり思っていたのに、寝台に寝ている。
どこかの旅籠のようだ。
寝台の横にあの人が鎧姿で座り込んでいる。
「・・・無事?どこか痛みは?」
私の手を握るあの人の手首に触れ、脈を見る。
大丈夫そうだ。でもその鎧から焦げくさい匂いが漂うのだけが気にかかる。
「焦げくさい。火傷、してない?」
隊長が首を振る。
「全く」
顔や手を見る限り、隠してはいないみたい。皮膚に外傷は見えない。
「大丈夫?みんなも、怪我は?」
「大事ない。外で控えています」
「良かった・・・」
私はそう聞いて初めて、自分の体を確認してみる。
両手の指、大丈夫、動く。足の爪先も。
肩、腰、動く。上半身、下半身、感覚がある。
脊髄損傷はないだろう。
脳も大丈夫そう。言葉もきちんと出る。記憶もある。
「落馬してから、どれくらい?」
私が尋ねると、隊長が外を見て
「三刻ほど」
約六時間。
「私、その間に吐いたり痙攣したり、した?」
「いえ、ただずっと気を失っておりました」
気絶。恐らく大丈夫だろうけど念の為、今晩は様子を見た方が良さそうだ。
そうだ。あの瞬間に馬から放りだされて、滞空時間がやけに長く感じた。
まるで下から風に持ち上げられるみたいに。
隊長にそう話すと、少し興味深そうに聞いた後、最後は物思いに耽る様子だったけど。
私がみんなの顔が見たいとお願いすると、少しだけならと渋々、部屋にみんなを呼んでくれた。
大きな男たちが鎧姿で10人以上も入ってきて、部屋がぎゅうぎゅう詰めになる。
「う、医仙」
テマン君が目を真っ赤にして呼びかける。
「俺がもっと、き、気をつけてたら・・・」
そこまで言って、ぎゅっと唇を噛みしめる。
「何言ってるの、岩のせいよ。誰も岩があんなとこにあると思わないじゃない、ねえ。
怪我はない?痛いところは?」
テマン君も、後ろのみんなも、一斉に首を振る。
その様子は無理しているようには見えないけれど、みんなあちこち焦げたり、煤けたり。
頬や手に軽い火傷をしている人も見える。
特に手裏房のシウルさんとチホさんの火傷が気になる。
「シウルさん、チホさん、火傷、大丈夫?」
私が寝台で身を起こすと、隊長が横から慌てて手を添える。
「イムジャ、今は」
その声を無視して
「隊長、私の荷を下さい」
とお願いすると、苦虫を噛みつぶした様子で、それでも嫌々荷を渡してくれる。
私は荷の中から軟膏を取ると、
「みんな、まず体を清めて。その後、冷たい水で患部、あー、傷を洗って。
出来れば、川が良いな。近くになければ、大きなタライで。
水を換えて、しっかり洗ってね。皮膚が完全に冷たくなってから、これを塗って」
その瓶ごと、近くのシウルさんに渡す。
シウルさんが薬瓶を恐る恐る受け取る。
「そろって煤やら火傷やら・・・化膿したら大変だから、まず急いで、清潔にしてね?」
はい、と返事をして、みんながぞろぞろ部屋を出る。
残ったのは、一人無傷のヒドさんと隊長だけ。
「女人、お主はもう少し肉をつけると良い」
と言い残し、ヒドさんが最後に部屋を出て行った。
「ダイエット至上主義世代だもの、仕方ないじゃない!」
少しばかり気分を害して、私は隊長の胸に寄り掛かる。
でもやっぱり少し気になって、小声で
「もう少し、ふっくらした方が良い?」
と尋ねると、隊長は苦笑して
「生きてさえいれば、肥えようが、細ろうが」
と呟き、私を寝台にそっと寝かせ、前髪を撫でつける。
「眠って」
ああ、この声。昨日も聞いたわ、夢の中で。
私はそう思いながら目を閉じた。
楽しんで頂けた時はポチっと頂けたら嬉しいです。
今日のクリック ありがとうございます。
SECRET: 0
PASS:
いつもお話のUPを楽しみにしています♪
ハラハラドキドキ!
ウンスの怪我が軽かったのはヒドのおかげかな?
良かったです(*^ ^*)
SECRET: 0
PASS:
全員が無事で良かったです
ホッとしました
もしかしてウンスが無傷なのはヒドの咄嗟の判断のおかげ?
焦げた匂いは雷功のせいかな
次は戦いの回想でしょうか
SECRET: 0
PASS:
ウンスも、皆も無事で良かったです。
でも、ヨン、本当に大丈夫でしょうね?
鎧の下も無事?
焦げ臭いにおいが気にかかり心配です。
ウンスが滞空時間を長く感じたのは、やはりヒドのお陰かな。
次のお話を楽しみにしております♪
SECRET: 0
PASS:
良かった~(^^)
ウンスに怪我が無いのはヒド…ですよね?
戦いの詳細は次のupでしょうか
SECRET: 0
PASS:
気を失ったウンスを乗せたまま戦うのは容易では無かったと思いますが,雷功が上手く行ったんでしょうね。
味方にも火傷している人がいるから,凄い力だったのかも。
ウンスをこんなにしてしまったから,怒り爆発みたいな。
まだ開京へはすんなりとは行かないのかな。
ドキドキハラハラです。
戦いで疲れたヨンを癒せるのはウンスだけ。
でも,ゆっくりする暇は無いのかな~
あの調息中のヨンの意識下に入り込めたウンス。
とっても気になります^^
SECRET: 0
PASS:
ウンスはやっぱり気絶(失神?)していたんだ。
乗馬の経験ないから解らないけどあの高さだから大変だろうな。
ヒドの内攻のおかげで滞空時間が長かったんだろうな。
ウンスが気がつくまでみんなどれだけやきもきしてたか・・・・。
ヨンの落ち込みようが想像できます。
ウンスは自分のことは後回しでヨンが一番!
次回の更新楽しみです。
SECRET: 0
PASS:
>ハルさん
コメありがとうございます♡嬉しいです♪
私も、皆様の元に伺いたいのに時間がー!
一日が50時間、いえ、30時間あれば!
と悶えております。
全く、遣り切れん。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
>あみいさん
コメありがとうございます♡
おお、皆様に伝わっておりますね。
何よりです。
お話は、公開した時点で
自分の手を離れるのを覚悟しているので
あとは、読み手様に全てを委ねるのが筋ですが
やっぱり伝わると、充足感が。
うふ。
戦いのシーンは書いたのですが
本気でド*ゴン*-ルと化したため
次回も控えめでございますw
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
ヨンは、もっとウンスと二人だけで
居たかったんじゃないかしら?
落馬した時、風を感じていたようなので、
ヒドの風功かな?って思うのが普通だけど
実は、ウンスも自分ては気づいていない、
自衞の内功を持っていたりするのでは⁇
なんて、いろいろ想像して楽しんでいます。
SECRET: 0
PASS:
どうなるかと思いますが、無事、危機を乗り切れて良かったです!
皆に愛されるウンスは本当に素敵な女性
なかなかヨンは独り占め出来そうもありませんね(笑)
SECRET: 0
PASS:
>shinobuさん
コメありがとうございます♡嬉しいです。
ヨンは、もちろん無事です。
大丈夫大丈夫。
あれは、医仙さえ無事ならばw
しかし皆様のお気持ちをここまで傾けて頂けると
書き手冥利には尽きますが
余り心配かけぬようにt、と思いまする
(はいこれキーワードです
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
皆が無事でホッとしました
次は戦いの回想?
戦いの迫力あるシーン
カッコイイ ヨン 見たいです
ヒドの戦いっぷりも楽しみにしています
控えめと言わず
思いっきり書いてください(*^O^*)
SECRET: 0
PASS:
>えみりんさん
コメ&推理ありがとうございます♡
詳細は、書いてみた処
本気で戦闘少年漫画になったので
控えさせていただきます。さらりとだけ。
読みたいですか?ガスっ!とか、バキっっ!とか
ぶおぉぉっ!とか、擬音つきのw
皆様のご要望が多ければ、喜んで書きますが(爆
そんな感じで、今晩またUP 予定です。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
したのでしょうか?やっぱり・・・みんなこれまたやっぱりとばっちり?
ひゃ~何処かでその模様は誰かが教えてくれるんですよね!(*´Д`)=зムハー
因みに私は少年漫画も大好きですよ!このシリーズがとってもアクションが多くて超嬉しいです♡アクション好き何で♪
SECRET: 0
PASS:
無事で良かったぁ~♪無傷なのはヒドのおかげかな?(*^^*)
目覚めてすぐにヨンや皆の心配して最後に自分の確認するウンスに胸キュンしました。
ヨンの雷光は強すぎたのかな?
味方かなり離れてたハズなのに…。離れててコレなら敵は全滅かしら?(*^^*)
続きが楽しみ~♪
SECRET: 0
PASS:
>すんすんさん
コメありがとうございます♡嬉しいです。
ウンスとヨンのつながりは、皆様が思ってるところに
着地するだけだと思います。
それをどのように書くか、
そして読んで頂くかが楽しみです。
練り練りの最中というか、
書いても書いても満足できず
言葉をすごく選んでいるところです。
開京までの山は越えました。
あとは静かに、帰還するのみ。
たまにはゆっくりさせてあげたいですねー。
その後は、信義時代のいろいろなお話が控えています。
これは、DVDの隙間を埋めることが多いので
すでに本編視聴済みの皆様には、
「えっ、こいつこんな風に見てたの!」
と、驚かれるやもですが。
その後は、また未来の二次。
どうしてこんなに溢れてくるのか・・・
(廃人だからですねそうですね
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
>イタkiss大好きさま
コメありがとうございます♡
テマンが裏で泣いてた設定なのは内緒の秘密ですw
私は馬から落ちて、鎖骨ポッキリの経験あり(リアルで)なので
さすがにウンスオンニにそれは・・・と思い。
麻酔あっても痛かったのに
高麗時代に可哀想すぎると思い、控えましたw
人生、無駄なし。全ての痛みを生かしております。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
>夢夢さん
コメありがとうございます♡
それも良いですね。内攻使い。
ウンスオンニなら、水かな。
火(=雷)を宥めて、でも火で形を変えて
威力を増す、とか。
ヨンとコラボで、霧を生むとか?
水功。いっちゃいます?ww
またしても劇画調で。
いろいろ、想像してみて下さいね♪
SECRET: 0
PASS:
>まあもさん
コメありがとうございます♡
もう、ヨンの宿世ですね。
独り占めが幸せか。
これも、この後のキーワードです。まあもさま♡
今回ではありませんが。
お心の隅に留めておいていただけると、後々
「こいつあん時、こんな話のネタまで
投下してやがった!」
と、まあもさまに悪い笑みを浮かべて頂けると
存じます。( ̄▽+ ̄*)ニヤリ
SECRET: 0
PASS:
>chocoさん
コメありがとうございます♡
今回は、あまりにラブラブが少なかったので
これ以上ガチっっとかバキっっとか
うおぉぉっっな書き文字は控えめに。
そうでなくとも、或日のほうでは
公開待ちお話の中、そんなのが多いのです。
もとが迂達赤の話なので、仕方ないとはいえ。
そちらでゆくゆくお楽しみいただければ幸いです。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
>ののさん
はい、来ました。
今回、削除したのでネタバレにはなりませんが
最初、アン・ジェに
「この、雷おやじが」
と言わせるシーンもございましたww
雷親父というな、せめて雷神だろうが!
と、書いた本人が憤慨し。
でもアンジェのキャラ設定では、
ヨンを一番普通の人扱いしているので
(これにも理由あり・・・書いたらきりがないー)
アクションお好きですか!
書いててもとても楽しくて、このまま劇画調でと
一瞬心が揺らぐほどでしたが。
いやいや、それは信義worldの一部でしかないと
己を戒めておりますw
がしっ、ばきっはまた別のお話で♡
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
焦げ臭いって。。。ヨンは大丈夫なのかしら?
内功使い過ぎた?
風は、ヒドが助けてくれたのね?( ̄▽ ̄)=3
ヨンの思いを知ったから・・・
躍動感が伝わってきて、展開が面白いです(°∀°)b
はい(^-^)/
静かに待ちます(-。-;)
SECRET: 0
PASS:
本編の時、ヒドみたいな人がいたら、戦いももっと楽だったでしょうね~(*^^*)
あたしはヒド好きかも(^○^)
SECRET: 0
PASS:
>みかんさん
コメありがとうございます。
ええ、えらく強かったと思われます。
だってもう、雷神降臨ですからw
もう、この二人は、どう書いても馬鹿ップルなのです。
自分の事なんか、構っちゃいないです。
チェ尚宮の叔母様が、本編で言っていた通り。
夜にまたUP予定です♡
よろしければ 覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
>mayuさん
コメありがとうございます♡
そうですね、私設定では、
長兄ヒド・次兄ヨン・末弟テマンなので。
これから義理の長兄と末弟の絆も深めねば。
まあ、テマンはヨンが信用する人は
我慢して受け入れますから・・・ww
わははは、静かにお待ちいただけますか。
ありがとうございます♡
よろしければ 今晩また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
>ヒデミさん
コメありがとうございます♡嬉しいです♪
そうですね、ヒドは、チュソクとトルベの
喪失を埋める、おまけに今回は不参加の
副隊長の穴まで埋めねばという、えらい重荷の中
チョ・インソン氏に(いえいえ独り言です
好きになってやって下されば嬉しいです。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
ウンスってば災難!やっと再会したのに!
覚悟して、来たんだろうけど。
ヨンは今度万が一どんな形にせよ、別れたら終わりだね。ヒドだけじゃない、私でもそう思うよ。
イムジャカップル!不滅ですよね!ねっ!ねっ!
失礼しました。
SECRET: 0
PASS:
>テジャンさん
コメありがとうございます♡
そうですねー。
と言いつつ、書いています。お別れの話を。
それも、どちらかが亡くなるという
そんな不可抗力系の話ではありませぬ。
ええ、Sですから。
恐らく、公開はしばらく後になりますが。
まずは【迷迭香】
今晩もUPの予定です。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
本気で 映像化してほしいくらい すごく よくて 更新が 楽しみです。頭の中では 映像化できてるんですけどね。信義廃人にとっては もうたまりません。これからの展開も 楽しみにしているので できるだけ 長く続けてほしいです。
SECRET: 0
PASS:
こらこらヨンってば。
やっちまいましたね。
味方にまで火傷を負わすとは、、、
ウンスの事となると我を忘れてしまう。
にしても、ウンスが気を失っていた三刻の間、
むさ苦しい男どもは生きた心地がしなかったでしょーね~。
SECRET: 0
PASS:
>チェヨン1さん
こんばんは♡コメありがとうございます。
何と素敵なお名前・・・惚れました。
最終話は、実は出来上がっています。
でもそこにたどりつくまで、ものすごい時間がw
きっと年単位でかかります。いや、それも
「一年とかじゃないのよ」的な。
映像化できていますか!
最近、そうしたお声を頂き、恥ずかし嬉し♡
映像などと贅沢は申しません。
どうぞお願いです、声だけはミノ氏のヨンのあの声で!
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
>あららさん
こんばんは♡コメありがとうございます♪
ええ、やっちましました。
今夜のネタバレですが、あれはもうw
初めてだったのです、いろいろと。
しかし、男たちも禁軍合流後も鎧姿とは。
ヨンが荷がないから、脱げなかったんですねーきっと(超他人事
今晩のUPも覗いて頂けたら嬉しいです♪
SECRET: 0
PASS:
とりあえずウンスは無事だったけど
男たちは大変だったみたいだね((>д<))
ウンスが目覚めるまでのピリピリ感…
ハンパねぇ~(笑)
SECRET: 0
PASS:
手に汗握り 読んでしまいました。またしても襲ってくる敵、意識を失っているウンスに 生きた心地しなかったでしょうね。無事に禁軍と合流できればいいのですが…
続きも楽しみです
SECRET: 0
PASS:
>ぽんたさん
こんばんは♡コメありがとうございます。
まじはんぱないでしょうね
大護軍は部屋に居座るし、外にはヒドいるし
こっわ!それこっわ!
テマン以外は生きた心地せず。
そんな6時間やだわー地獄だわー
と、他人ごとみたいに書いてますがww
今晩もこの後、そのこっわい話の続きをUPするのでした♡
SECRET: 0
PASS:
>mirukuさん
こんばんは♡コメありがとうございます♪
大丈夫ですよーうちは基本全話HAPPY ENDを
目指して書いております♡
途中のドキドキは、エンタメとして読んで頂ければ♡
よろしければ また覗いてみて下さい♪
SECRET: 0
PASS:
落馬しても、チェックを怠りません。
そして、皆の心配を・・・
ヨンが、苦虫を噛み潰したような顔をするのも当然だわ。
ヒドに言われて、ウンスが聞いたら
「生きてさえいれば、肥えようが、細ろうが」
・・・と、ヨンは答えました。
本当だろうか?( ̄ー☆
SECRET: 0
PASS:
>mayuさん
こちらにもコメありがとうございます。
これは本当だと思います。
まあ、照れ隠しにとんでもない事を言って
ウンスの逆鱗に触れましたが
@Runaway Love(爆