「テマンが、済まなかった」
ヨンがヒドにそう言って軽く頭を下げた。
俺の為に大護軍が、そんな男に頭を下げないでくれ!
テマンがそう言いに樹を降りかけた時、ヒドの声が聞こえた。
「あの時の隊長と同じか」
あの時の隊長。誰の事だ。
テマンの動きが、中途半端に樹上で止まる。
「・・・あの時、隊長は生きるべきだった。
あの答を、生きて王に返すべきだった。
俺は逃げん。今はこの身命より遥かに大切な方がいる」
ヨンが静かに呟いた。
「そうだな。あの方は死に場所を探しておった。
お主は今あの女人と共に、生きる場所を探しておる」
ヒドがそう言い、深く溜息を吐いた。
「ヨンア、お主がそうした者を持てた事を嬉しく思う。
そして哀れにも思う。お主の気性を知る故な」
平坦な声音だがヒドはただ、痛ましそうにヨンを見た。
「もしもお主の王が、己かあの女人か選べと詰め寄れば何とする」
「それはない」
即答したヨンにヒドは尚も問う。
「何故そう言い切れる」
「俺は四年前、既に答えを出している。王様もご存じだ」
それを聞いてヒドは声を失い、次に噴き出した。
いつまでも堪え切れぬように肩を揺らしている。
「そんな事になっていたとは。
成程、あの小僧にお主の事を知らぬと罵られても詮無き事」
そして一頻り笑った後、ヨンを見て尋ねる。
「今も、剣は重いか」
ヨンは真直ぐヒドを見た。
「重い。重いからこそ、守りたい方のためにのみ振るうと決めた」
ヒドは静かに頷いた。
「ヨンア。俺には未だに判らん。丸腰の相手ならともかく、命のやり取りぞ。
己に刃を向ける人間を退けることの何処が悪いのか。何をお主がそれほど考えるのか。
善と悪は表裏一体と、俺は信じておる。
お主が断たねば、泣く者、悲しむ者も増えたろう。
強くなれ。誰にも、何も、縛れぬ程、奪われぬ程に。
出る杭は打たれるが、突き抜ければ誰も打てぬ柱となる。
倒れたくなくば、柱を折ろうとはせぬものよ。
お主の兄弟子として、言える事はこれだけだ」
そして樹上を仰ぐとにやりと笑って
「すまなかったな、小僧」
そう残し、ヒドは歩き去っていった。
テマンが樹を滑り降りて、ヨンの横に立った。
「済みませんでした、隊長、俺・・・」
ヨンは、無言でテマンの頭を叩いた。
「二度とするなよ」
「はっ、はい!!」
テマンは深く頷いた。
「お前は気付いたろう」
ヨンがテマンに尋ねる。
テマンは黙ってヨンを見つめ、次の言葉を待つ。
「ヒドの風功を」
「・・・鎌鼬ですね」
ヨンは頷いた。
「そうだ。俺たちは、赤月隊で同僚だった」
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テマンが語り部となり、スリリングな展開からヨンの内面に迫る静かな展開となりましたね!
動と静の切り返し…お見事です!ドラマの中では「剣を重く感じる」バックグランドの描写が曖昧だったから、消化不良気味でした。
より深い人間味溢れるヨンが描かれる事を楽しみにしてます。
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ヒド…カッコイイ⁉
妄想が膨らんでいくヨン❤
一日に二度も更新されて
嬉しいじょぉ~♪
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赤月隊以降会っていなかったのであればヨンのウンスへの何にも代えられない気持ちの重さを知らなくても仕方がないですね
(噂は耳に入っていたと思います)
だからテマンとも初対面でしょう
次はヒドとの関わりの話かな?
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テマンは大護軍 命だからどうなるかと 思いました
ウダルチの皆はチェヨンの過去はあまり知らないのですね
それでも ヨンに命を預けている…こんな時私も男に生まれたかったと 思います
男の友情~~~いいなあ(^.^)
ヨンはウンスか王様か選べと言われたら ウンスを選ぶんでしたか?
話しがこんがらがって…(-。-;
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良いですね。どこまでもこの二人カッコ良くって
そして長いセリフを言い切りましたね、ヒド。
分かりやすく言っていただいて私は有難かったよ、ヒド。
また覗きに来ます♥
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>ののさん
コメントありがとうございます。嬉しいです♪
言い切りました。長丁場ご苦労、ヒドw
また覗きに来てくださいませ♪お待ちしております。
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>ゆきんこさん
コメントありがとうございます。嬉しいです♪
そうですね、ヨン、迂達赤隊長になるまえ
国の法を破って、赤月隊を脱獄させています。
(小説にもそんな表記があります
赤月隊自体が隠密集団なので、
実際に存在したかもわからない、的な
扱いだったんですよね。
DVDでも、王とヨンが話してる場面があります。
えっと、これは私の解釈ですが
最終話で、奇轍@「王にならんか」と言われたヨンが
「すでに王を頂きながら何故俺が王になる」と。
その後に医仙が攫われて、王と対面したとき
「医仙と共に天界に行くという答えを聞くためだ」と言われ
「某は此処に残ります。俺の大切な方を守るために、お力をお貸しください」
と言うのです。
これは、ウンスを守るために王を選んだ、と
私は解釈しました。
それを王も理解したと。
力関係だけで言えば、王>ウンスです。
ただし、王が医仙を見限った時点で、ヨンは
王を捨てるという事で、
精神的には当然、王<ウンス。
そしてヨンは今回「大切な方のためにのみ
振るうと決めた」ので
大切な方はもちろんウンス。
ありていに言えば
「チョナがイムジャを守って下さる限り、
チョナに俺の力をお貸ししましょう。
ただし、見捨てた時点で俺も去ります。
努々お忘れなきよう」
が、私の解釈です。
文章にすると、何とも味気なく申し訳ございません。
私のお話内では、この設定になっております・・・
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>あみいさん
コメントありがとうございます。嬉しいです♪
次回はまたちょっと違う切り口になります。
ヒドヒョン哀れ。(痛ましそうに見てあげます
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>ぽんたさん
コメントありがとうございます。嬉しいヨン♪
ほらほら、チョ。インソン氏ですからね?
何させてもかっこいいんですよ。
噴き出しても。
痛ましげにヨンを見ても。
うっわー今脳内でインソン氏とミノ氏の
2ショットが。ぐるぐると。豪華!
明日も2話公開ですヨン♪
(必死に今週末完結を目指しております
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>まあもさん
コメントありがとうございます。嬉しいです♪
明日朝は、ヨンが語り部と化します。
そして久々の馬鹿っプルもww
乞うご期待!
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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ヨンには、逃げたようにみえた隊長。
しかし、冷静に考えてみれば・・・
家族の様な隊員はいても、ヨンの様に身命より大切だと思える者は居なかった。
その辺に、大きな違いが出てきたのではないでしょうか?
だって、ヨンにとってウンスは、自分より遥かに大切な存在と捉えていますもの。
その想いが、震える手を鎮め、重い剣を持たせ、ウンスを延いては高麗を守っている。
ヒドの「縛られぬ程、奪われぬ程強くなれ」と言った言葉、重いです。
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>mayuさん
こちらにもコメありがとうございます。
あの時のヨンは、確かに隊長が
逃げたと思っていましたが
先になればまた違う答えが出せるのでは
そう、思います。そうあってほしい。
尊敬した男が、最後に逃げたと思ったままでは
いてほしくないな、と思うのが正直なところです。
こればかりは、何とも・・・ですが。