迷迭香 | 6

 

 

日が中空を通り、少し西に傾きかけた頃。
河原に座り込んでいたヒドが、その腕を目の上からずらした。
「やっと来たか」

ウンスはその声で弾かれたように、薬湯を煎じていた焚火の前で腰を上げる。

山道を、馬がこちらに向かってくる。
先頭の馬を駆るのは見慣れた大きな影。伸びた背筋。
ウンスはそこに向かって走り寄った。

 

ヨンは馬上から駆け寄るウンスの姿を認めると同時に馬を止めるが早いか、鞍から飛び降りる。

「お帰りなさい!無事?どこか怪我は?」
駆け寄ってきたウンスの腕を掴み、そのまま秋の丈高い草の中に紛れ野原を進む。

他の兵から少し離れた所で、ヨンはやっと息をつく。
「イムジャ、無事か?」
自分の目の前にいるウンスを確かめるように眸を凝らす。
ウンスは頷きながらヨンの額に触れ、頬を撫で、手首の脈を取りながら、手先から肩を通り、胸、腹から腰、足と順に目で、手で、見て触れて追っていく。

救急救命の基本。見逃さないよう。素早く。確実に。
次に立ち上げって背後へ回り、確認して。
出血、骨折、発熱なし。脈も正常。

「良かった。無事ね。痛みは?」
「ありませぬ」
「他のみんなの怪我は?」
「重症の兵はおりません。皆掠り傷です」
「あとで手当てをするわね」
ウンスはようやく安心して、大きく笑った。

 

兵たちは思い思いに草はらや河原で休息を取りながら、テマン達に戦の状況を語っていた。

「大護軍の凄まじさ。何度見ても、信じられん」
「鬼剣一振りで、敵が三人も五人も倒れたぞ」
「あの方が参戦したが最後、無事で帰れる敵はおらん」
「しかも、ほとんどが峯打ちだった。
参月は動けんだろうが、骨が折れただけで死んではいなかった。自分で毒を噛み、皆自害した」

ヒドはそれを聞いて鼻を鳴らした。
「峯打ちとは。甘い奴だ」

テマンがその言葉に無言で立ち上がると、やおらヒドに飛びかかった。
周囲の兵が驚き、慌てて止めにかかる。
「お前に、大護軍の何がわかる!!」

ヒドから引き離され、兵たちに寄ってたかって体を押さえつけられながらテマンは咆えた。

「テマナ!」
騒ぎで駆け戻ったヨンが、ヒドとテマンに割り入る。
「何事だ」
「こいつが大護軍が甘いと!何も知らんのに!
大護軍の剣が、どれほど重いかも知らんのに!!」
「テマン!!」

ヨンの鋭い檄が飛び、テマンははっと口を噤んだ。
その言葉を聞き、ヒドがわずかに目を見開く。
「・・・重い?」

テマンが肩で息をしながら、射殺すようにヒドを睨みつける。

ヨンは無言で、その眸は今やテマンではなくヒドを見ていた。

 

 

 

 

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10 件のコメント

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    ヒドはさらんさんのコメ通りの
    一言多い男だ~(笑)
    ヨンのこの後がすごく気になる…(-_-;)
    毎日ドキドキだわ❤
    続き待ってるヨン♪

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    いよいよ物語の核に入る頃かしら?
    ヒドとヨンの関係が判明しそうでドキドキ…
    ところで…前半のヨンとウンスの再会シーンが素敵で、久し振りの甘甘モードかしら?と期待にしたが、見事に裏切ってくれました…さらん嬢(笑)
    続きを楽しみにしております。

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    そうですよね、人の命の重さを知った剣。
    きっとヒドは知らないんですよね。さて、ヒドはどう出るんでしょう次の更新お待ちしています(^-^)/

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    >ののさん
    コメントありがとうございます。嬉しいです♪
    そう、ヒドはね。
    もう少ししたら、ヨンが語り部と化します。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    >ゆきんこさん
    コメントありがとうございます。嬉しいです♪
    妄想は明日の活力!
    ガンガン妄想してくださいませ♪
    今回は、もっとパワーアップ予定です。
    うふふ。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    >まあもさん
    コメントありがとうございます。嬉しいです♪
    そうです、今回は少年漫画編ですからww
    ラヴモードは、暫く延期でございます。
    その代わり、今回は今後に続く絆を
    お見せする所存。
    ああ、楽しんで頂けると良いのですが。
    どきどきです。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    >ぽんたさん
    コメントありがとうございます。嬉しいヨン♡
    ね、多いでしょう。
    滑りまくるのですよ、渋い顔して。
    (ほら、インソン氏ですから。イメモは)
    次のお話から2話で、ほとんどヒドの正体は
    発覚いたします。
    何度も言いますが「ああ、やっぱ」的立ち位置ですヨン。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    ウンス冷静ですね、このような状況だから仕方ないけどウンスに甘えさせてあげたい私です
    文章には具体的にありませんでしたが丈の高い草の中にウンスを連れて行ったヨンは瞬間でもウンスを抱き締めたという想像をしてもいいでしょうか?
    教えていただいたチョ・インソンさんをチェックしてきました
    いい男ですね~、あの顔に髭をつけた方がヒドらしいかと思って勝手に髭面にしてイメージしてます
    ありがとうございました

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    >あみいさん
    コメントありがとうございます。嬉しいです♪
    チョ・インソン氏は、写真も良いですが
    動くといっそう良いです。
    髭もいいですねー!くぅぅ。
    (朝から興奮
    ふふふ、抱き締め妄想。
    抱き締めシーンは、もうすぐ出てきます。
    今回は、ヒド&テマンにまんまと邪魔された
    哀れなヨンなのでした。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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