私は願った。今までの決して短くない修行で師事した
どの師匠を見つけた時よりも熱烈にひたすらに、この方に師事したいと願った。
貴方の全てを知りたい。
私を赦して、側に置いては下さいませんか。
そう言ってこの方の医術の全てを習得できればどれほどに嬉しい事だろうかと思う。
しかし言葉にすれば、まるで熱烈な恋慕の情と紙一重のような響きではないか。
そう思い、さすがに口にするのは憚られたが。
隊長が約束した以上すぐに天の世界にお帰りになると、頭では分かっていながら。
ただあの天界の道具を手に王妃様や隊長を治療した時以外の天界の医員は、なんと言おうか・・・
浅薄と言うか、お転婆と言うか。
恐れ多くも天界の方に対してこのもの言いは失礼であろうが、あれほどの医術を施しながら、およそ我々の知る医者としての覚悟や品性とは、少し違うものをお持ちのようなのだ。
どちらが真実のこの方の姿であるのか。
知れば知るほど興味が尽きない
とにかく良くお話になる。
赤い髪で、大きな声で、身振り手振りを交えて。
その為どこにいても、すぐ天界の医員がいらっしゃるのだと分かる。
天界語ゆえ内容については把握しきれないものも多いが、何かその中で大切なことをおっしゃっているのではないかと思うと、そこから注意を逸らすことも出来ずに。
私は天の医員が私に話していようといまいと、あの御声を常に追いかけ、常に耳を傾けるようになった。
何か秘訣があるのではないかと思うと、その一挙一投足の全てを目で追い、頭に刻み込むようになった。
******
船に乗り、馬を駆り、貿易を営む父について放浪した、そんな幼少時代だった。
各国の言葉を覚え、そして天竺でアーユルベーダを、元で中医学を学んだ。
薬について学べば、おのずと毒についても詳しくなる。
経絡について学べば、行き着くのは人体の秘孔、点穴だ。
医術とは人の命を救いもし、また一瞬で奪うこともできる。
その恐ろしさ、力の大きさに、私は常に己を律する事を覚えた。
特定の師を仰ぐ事はなかった。
鍼灸、千金方、経絡、漢方。
学びたい事は目の前に山のようにあり、それぞれに、その道の医者がおられた。
それらの師匠に蛭のように食いつき、全てを学んできた。
どなたに師事してもその深い技に驚き、目前の新しい扉を開くたび、胸が例えようもなく躍った。
しかしこの方のように、心より師事を渇望した事はない。
もちろんそのあまりに優れた医術が第一の理由ではある。
それにしても、それだけだろうか。
それだけなら今までの様に喰いつき離れず、天の医員様がここにいらっしゃる間、その技術をすべて己の血肉とするため、師事すれば良いのに。
何故、お願いできないのだろう。
医術を施す以外の時のこの方が、余りにも幼い子のように無邪気に見えるからか。
心より尊敬しているのにそれ押し付け、この方に真直ぐ断られるのを畏れているのか。
私は己のこの気持ちの出所を掴みかね、この方を見ればそれを見極めたいと、つい目を凝らすのを止められなかった。
天界の医員はすぐにお怒りになる。
隊長が言う事を聞かぬ、診察を受けぬという大事から、膳が好みでない、布団が固いという瑣末事まで。
すぐにお笑いになる。
光が眩しい、水が澄んでいる、花が美しいと笑い、膳が旨いと笑い、典医寺の庭が広いと言っては笑う。
すぐにお泣きになる。
最初は国に戻せ、ここは嫌だとお泣きになられた。
しかし近頃の涙の理由は、全て隊長が原因だ。
この方の真実の涙を初めて見たのは忘れもしない、あの時だった。
天界の医員の予感通り、ご自身が刺した隊長の腹の傷に膿が溜まり、その毒が血にのって体中に巡り。
隊長が倒れて、再度典医寺で隊長の腹を開けた時。
治療自体はうまくいったのに隊長の意識が戻らぬと、この方は激しく心を乱されていた。
この方はとても恐れていた。
ご自身の患者との触れ合いを恐れ、心が通じるのを恐れそしてその命を失うことを畏れていらした。
だからこそあの天の医術を施しながら、心を近づけず、役目で医術を施す以外は患者に近づきたくないと思っていたのか。
ここからは入って来るなと、自分に線を引いて。
ああ、だからか。
最初にお会いした時、診察台に横たわる血に塗れた王妃媽媽に駆け寄らなかった時、私はこの方が医者だと思わなかった。
医者であるなら目の前の患者の苦しみを放っておくことなど、到底出来ぬと信じていた。
冷たい態度にこの方が真の医者ではないのではと、その技を見るまで疑っていた。
隊長とてご自分が刺したから、治療をされているだけだと。
その隊長がこの方にとって、今、初めて死ぬ患者になるかもしれない。
隊長の意識が戻らぬまま、心の臓が止まった時、私はこのまま隊長を逝かせるべきと覚悟した。
脈が戻っても、魂が此処に戻りたくないのだからと。
しかしこの方は心の臓が止まった隊長の上に跨って、止まった心の臓を上から押し、その息を分け与えながら、ぼろぼろと大粒の涙を流した。
私の制止を振り切って、何度も隊長の体を揺らした。
この方にとって今の隊長はご自身が天界に戻る為の命綱、己が刺したという初めての罪、医者として初めて失うかもしれぬ命、その全てなのだろう。
ご自身の全てを傾けて、隊長の命を救おうとしている。
勝手に行くな、私を守ると約束したろうと、大粒の涙を隊長の上に雨のごとく降らせながら、ただ泣きながら、心の臓を押し続けた。
その涙こそが、あの時の隊長に必要だったのだ。
己の力を尽くしたうえで及ばなかった、逝きたいのだから逝かせてやれという、自分を律したうえでの私の静かな諦めではなく。
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チャン先生の心の内がとてもわかりやすく語られておりおもわず(あー、そうそう!確かに、わかるわー)と頷きつつ読みました
この時代に男性が女性に教えを請うということは無かったと思います
でもそれだけがチャン先生を押し止めた理由ではないでしょう
次回の述懐を楽しみにしています
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ドラマのチャン先生、小説のチャン侍医。
私の中で少し印象が違うんですが、さらんさんの書かれるチャン先生は小説のチャン侍医だなって思います。説明が難しいんですけど、淡い思いと医術への渇望。入り乱れてる感じ。
ドラマの方はもう少し簡単な解釈かな?とにかく格好いいです!さらんさんのチャン侍医(///∇///)
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チャン侍医もウンスに惹かれ(?)ていたのかな?←私はそう思いたい
見守りたい と言うような感じだけどね。
ウンスがヨンを助けようと必死な所はDVDのシーンが浮かびました。
原作ではウンスの感情が少しだけ書いてありましたね。
チャン侍医のお話いいですね。
更新待ってます。
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治療は上手くいっても、生きる気力の無いヨンに困惑してしてましたよね。
そして、ヨンが亡くなると自分が元に戻る術がなくなるという不安。。。
全て見ていたんですね。
ウンスが、ヨンによって一喜一憂する様を。
ここでは、チャン侍医の思惑と行動はどうなるのかしら?
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さらんさん、こんにちは。
心にぐっと来ちゃいました。
やっぱり、チャン侍医はウンスを愛していますね❤ ふふふ(^^)/
チャン侍医の言葉を通して見えてくる、ヨンとウンスの出会いの頃のさらんさんの描写が素晴らしく、すべてが映像としてよみがえり、ちょっと仕事中なのにヤバイです!!
六花/3が、ホントに待ち遠しい❤
ヨンの声も、そろそろ聴きたいですね(^_-)-☆
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淡々と語られるチャン侍医、その語られることばを読みながらドラマの画面を思い出しています。チャン侍医のあの素敵な声が脳内再現ドラマとともに聞こえてくる気がします❤
お話のつづき楽しみにしています。
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>あみいさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
ヨンもウンスオンニに"奴"と言われて
驚くやら腹立つやらな顔してましたねー
理由はもう、この章を読んで頂くしか。
いろいろと、盛り上がりかけな感じです。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>ののさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
今は、医術への渇望>想いって感じです。
なんか今回のチャン先生編は、
自分の中で凄い盛り上がってますww
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>イタkiss大好きさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
惹かれていたかーは、ここからw
何か自分の中では盛り上がってるチャン先生編。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>mayuさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
そうですね、チャン先生、というか
フィリップ氏は、私の中では見守る派。
太王の時も、シークレットガーデンも。
前に来ないですwww
さて、どうなることか・・・
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>夢夢さん
こんばんは❤コメありがとうございます。
この後、バタバタありますが、今回は
本当に、ひたすらチャン先生の声を聞く編。
自分の中ではかなり盛り上がっておりますよー❤
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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>まぐかっぷさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
語り部に徹するチャン先生。
ひたすら自分語り、しています。
その分、ヨンの声がほとんど聞こえず。
禁断症状、週末あたりにMAXになりそうな
予感でいっぱいな私です。
よろしければ また覗いてみて下さい♪
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Σ(゚д゚lll)、こ、こちらのシーンの会話も、意味がわからなかったんです。苦労して手術するより、美容整形がもうかるから?いや、そんなことじゃなく…えーっと…で、自分の中で止まってました。まさに、こういうコトですよね(ノ∀`笑))ありがとうございます!
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>7815199-unsuさん
こんばんは❤コメありがとうございます
このあたりは信義小説3巻が出ず待ち草臥れ、
一人で謎解き遊びをしていた頃
そして今後【三乃巻】でも触れるあたりの
DVD12~14話当たりのお話ですね・・・
ざっくり書きすぎていて散文的で纏めきれず
【三乃巻】のUPに踏み切りましたが。
ああ、なんだか懐かしい。
普段自分がUPした話は、全て読み手さまのものと思い
読み返しをしないタイプですが(誤字脱字修正以外は)
こうして読むと書きたかったことは今もあまり変わっていないな、と。
そして振り返ると、相当量を書いているなと。
普段の飽きっぽい自分では、到底信じられませんw
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>さらんさん
うわっΣ(゚д゚lll)そうなんですか?シンイはまさに、さらんさんの秘めた才能を出させた的なドラマですね!ウンスの言いたいコトが、よくわかり、納得できましたよー(=゚ω゚)ノ☆
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>7815199-unsuさん
こんばんは❤コメありがとうございます
いえ、秘めたも公も、才能はありません(`・ω・´)キリッ!
あるのは廃人魂のみです。
でもウンスの心が分かって頂けたら嬉しいです❤