私のその時の気持ちを、なんとすれば正しくお伝えできるか。
居間に戻り、私はヒョンジク兄君に正直にお伝えしました。
この子は一度剣を持てば、二度と離しません。宜しいのですか。
「良い」
兄君は心より満足そうに頷かれました。
兄君。
私は最後に伝えねばならぬ言葉を、目を伏せてひと息に口に出しました。
あの子は雷功遣いでございます。
さぞや驚くと思われ微かに床より目を上げると、兄君はお心動じた様子は全くなく。
それは寧ろ、安心したお顔に見えました。
「やはりか」
そうおっしゃった兄君の笑みを、今も忘れられませぬ。
雷功遣いは他の内功使いとは異なる者です。
内功遣いとは数多の才有る幼子を集め、その中でも選りすぐった者を訓練し作り上げるもの。
けれど雷功遣いだけは、訓練では気は練れませぬ。
身内に雷功を持って生まれねば、どれだけ厳しい鍛錬を受けても、雷功遣いにはなれぬのです。
よりによって私の甥がそうした者とは。
思わず漏れる息を、止める事が出来ませなんだ。
兄君は当時、国を憂い、王室を憂い、赤月隊に内々に援助を続けておりました。
金子、武器、食糧、寝泊まりの仮宿。
内功使いだけが入隊を許され、その存在すら真実なのかと、その貴賎を問わず人の口に上った隠密集団でございました。
どんな高官であれ、接触は容易い事ではない者たちです。
しかし兄上はその赤月隊の隊長、ムン・チフ殿と懇意でございました。
私がヨンの雷功の才を伝えた後、兄君は甥の修練にムン・チフ殿の助言を頂いていたようでございます。
里下がりの度に、ヨンの武芸は上達しておりました。
当初は操れなかった気を整えるばかりか、齢十にして運気調息を修めました。
兄君とムン・チフ殿は驚かれ、また大層喜ばれたとの由。それも尤も。
内功の才有れど、身内の気にのみ一点集中しその流れすら操る運気調息の域まで到達するは、手練れとて容易な事ではないのです。
本格的な内功の鍛錬を始めると、赤月隊の兵をつけ、ムン・チフ殿自らもチェ家の屋敷へ幾度も足をお運び下さいました。
その頃の甥は同時に、兄君より教えを受けていた四書五経を修めました。
竹が春先に残雪の固い地面を割って芽を出し、見る間に伸びゆくように。
甥の文武芸はそのころ既に、町の師範や皇宮の兵の域をゆうに超えておりました。
ヒョンジク兄君が亡くなられたのは、甥が齢十六の時でございました。
私が駆け付けた時、甥は見金如石と認められた紙を手に、あの時の居間、兄君の眠る足元に静かに端坐しておりました。
ヨンア。私は甥に、そう声をかけました。
「忌服などするな、とおっしゃられました」
ヨンアは私を見上げ、あの頃と寸分違わぬ真っ直ぐな瞳で申しました。
心得た。私は頷きました。
それがあの屋敷で甥を見た最後の姿でございました。
甥は嫡男として葬儀一切を取り仕切った後、出奔致しました。
ムン・チフ殿の元か。
私はそう思いました。
一度剣を持てば、二度と離しません。宜しいのですか。
己で兄君に告げた言葉が宣託のように、己の頭に、心に、幾度も響き渡りました。
もうあの子は生涯、剣を離して生きてはいけぬ。
同じく剣を握るものとして、それが容易くないことを私も知っておりました。
せめてその心に少しでも平穏を保てるよう。
離れてしまった叔母として、そう神仏に祈るしか、無くなってしまっておりました。

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ヨンの成長をずっと見続けてきたチェ尚宮。思い出す形でヨンの成長が覗けました。それと同時に叔母上様の憂鬱もハッキリしてきたように思います。
もうすぐあのときがやって来るのですね。
又覗きに来ます(*≧ω≦)
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>ののさん
おはようございます❤コメありがとうございます。
雨の月曜日、叔母上の心は憂鬱です。
私も憂鬱だわー!
そう、あの時が今晩、やって参ります。
書いててちょっとしんみりしてしまいました。
今週も楽しんで頂ければ嬉しいです。
よろしければ 今宵また❤
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さらんさん
DVD無限ループ視聴しつつ、さらんさんのバックナンバーも日々繰り返し、そして新作も拝読してますー(ヤバイw眠い
映像でヨンを観ては、黙っているけどこう思っているんだな……と、さらんさんのお話が頭に浮かびいつもよりドキドキしてます
昨日は、
DVD視聴がただいま終盤なので(何度目か不明w)チェ尚宮さまのあの刀にはそんな思い出が~なんて思いながら拝読しました
次回、そして今後の新作も楽しみにしています!
あ、どうか無理はされませんように…
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なんというタイミングの良さ!
昨晩、休む前に「シンイ」第二巻を読み返していて、ヨンとムンチフの出会いのシーンも読んでおりました。
だって…さらん嬢の妄想(笑)いや想像される素敵な世界にどっぷり浸る為には、DVDだけではなく、小説本の復習も必要かと…
やっぱりテレパシーが通じたのかしら?(笑)
相変わらす、さらん嬢の作戦通り、どっぷり「シンイ」漬けですぅ(笑)
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叔母であり
先生であり
母親でもある
ヨンの事を思う気持ちはウンス以上
かもしれないですね。
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ウンスの登場まで憂鬱は続くんだ・・登場してもまだまだ続くけどね。
チェ尚宮さまの心の重荷になっていることはヨンは知らないだろうな・・親の心子知らず
次回赤月隊のお話?
更新たのしみです。
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すっごく面白いです!!
内功使いの中でも、最高の域の雷功使い。
なかでもヨンの力は、隊長以下、他に雷功の使い手有れど誰も及ばぬ程の力なのですね。
ヤバイ、ホントにヤバイです!!
頭が良くて、誰にも負けない強さが有って、殺人的なイケメンで、あの声の良さ……
ウンスがうらやましい!(^^)!
チェ尚宮、さすがです。
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小さき時より文武に」優れていたんですね。
剣を持つ者の心の闇を知っているコモ。
ヨンの先行きを憂い、本当の親の様に心配していたのだろうと思います。
コモのお話も、ヨンの一面が覗けて新たな発見があり面白いです(o^-')b
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>みけさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
いやいやいや(^▽^;)
無限ループですね。嬉しいですが、
どうかゆっくりお休みくださいね❤
お話は逃げませんから・・・(●´ω`●)ゞ
次は切ない恋バナにするか、はっちゃけるか
考え中でございますw
今夜最終話、宜しければまた。
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>まあもさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
通じてますとも(〃∇〃)ンフー❤
もう、なんか脳内物質出てる気がします。
書いても書いても書きたいって・・・おかしい。
今夜もどっぷり信義漬けで!いざ共に❤
最終話も、宜しければまた。
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消えた…今延々書いてたコメが消えた。゚( ゚^∀^゚) ゚。
気を取り直してもう一度…。
さらんさま。
愛のお手紙ありがとうございましたm(__)mペコリ
私の乱文ラブレターにあんなに丁寧なお返事を頂けて、逆に申し訳なく…嬉しく思っています(*^_^*)
さらんさんのイタコ状態を想像して、安心致しました。
さて。
週末(ファンレター後は)出掛けていたのでこちらに来られず、やっと来ても好きなおかずは最後に食べるタイプなので、なかなかさらんさんのところに辿り着けず…。
やっと来てみたら更新何件Σ( ̄□ ̄;)?!って驚いていますwww
↑さっきここまで全部消えました(/_;)
ではでは読んできまーす(はぁと)
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>みきみきさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
そうですね、ある意味 裏ボス(ウンス)V.S.隠れボス(尚宮様)
ヒー!Σ(゚д゚;)コワ!
そんな最終話、この後UPです。
宜しければ、また。
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>イタkiss大好きさん
こんばんは♡コメありがとうございます。
赤月隊は、書きたかったのですが
チェ尚宮様は、知らないんです(@マイ設定)
そのうち、別の一人称で書く気はしますが
あまりに悲しい最期が分かっていると
HAPPY END主義の私としてはううーむ、と。
今宵、最終話です。宜しければまた❤
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>夢夢さん
こんばんは❤コメありがとうございます。
ヤヴァいですか!嬉しいです!
ヨンアボジ❤超有名な文官らしいので・・・
まさに文武両道、そこに殺人的な顔と声。
そこに加えて、あの独占欲ですよ。どっすか?
ということで、今夜は尚宮様最終話。
宜しければ、この後また。
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>mayuさん
こんばんは❤コメありがとうございます。
いやあ、チェ・ヨン将軍を調べると、
面白い歴史がいろいろ出てきて興味深いです。
(実在系)
何度も槍で刺されても倒れなかった、とか
大小戦で負けたことない、とか。
興味があり、基本は史実をもとに書きたいので
いろいろ調べていますが・・・うーん。
複雑な気持ちになる言葉がたくさん出てきます。
愛ゆえに、難しいっす!
ということで、完全フィクション尚宮様篇は
この後最終話UP予定です。
宜しければまた❤
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>みゅうさん
きゃあぁぁぁぁ!!Σ(゚д゚;)
消えてしまったのに、また書いて頂くなんて
なんと恥ずかし嬉し❤❤
そうですよね、しばらくぶりに見て頂くと
きっとえらい数のUPになっていますよね。
す、済みませぬ!!
どうかゆるりと、お時間のある時に❤
私のLOVE letterでのお目汚し、申し訳なく。
みゅうさまへの愛が爆裂いたしました。
いたこ、コワ!
本当に、自分でC+Pしてお話UPするとき
全然覚えてないフレーズがあったりして
脳内物質か、憑依しか思いつきません。
アレー?( ゚-゚)( ゚ロ゚)(( ロ゚)゚((( ロ)~゚ ゚コンナノシラン!
みたいな。
でも、楽しいから良いですww着地そこか!ですが。
ゆっくり読んで頂ければ嬉しいです❤
最終話で、今宵、また。