チェ尚宮の憂鬱 | 2

 

 

翌朝の起床後の洗顔着衣を手早く終え、私はイ尚宮様のお部屋へ向かいました。

部屋の外で名乗り頭を下げておると、中より
「お入り」
と、すぐにお許しの声を頂きました。

そっと扉を開け、私は室内でまたお辞儀をし、お声を待ちます。
「お座り」
座卓の前まで進み、頭を垂れたまま着席いたします。

「どうした、恐縮して」
「昨晩は、申し訳ございませんでした」
「ほう、何を謝るか」
「見習いが、勝手に部屋を抜け出ました」

叱咤の声が飛ぶでもなく、そっと目を上げて様子を拝見すると、イ尚宮様は私を見て微笑んでおられます。
私は身の置き所なく、さらに縮こまります。

「武芸が好きか」
「とんでもない仰せ、私のは猿真似にございます」
「猿真似とな」

イ尚宮様は愉快そうにははは、と声を立て、笑われました。
「では猿よ、人になってみぬか」

その日文女官見習いだった私は、イ尚宮様に召し抱えられ、武閣氏へと移りました。

皇宮におわす高貴の方々を守る、女官のみの護衛隊でございます。

私はそこで、初めて水を得た魚となれました。
早朝の訓練も、夜半の立ち番も、三日三晩の移動も、苦にもなりませんでした。

何よりもイ尚宮様が目をかけてくださったのは、恐れ多くも私の剣捌きでございました。

「チェ奏、そなたは剣を持て」
私にそう言って下さったのは、イ尚宮様に初めてあの庭でお言葉を頂いてから、六年を経た頃でした。

「そなたは体の幹がしっかりしておる。しなやかで柔らかいが、幹が太い。
剣を捌くにはその幹が大切だ。ふらついては捌けぬ」

そして小刀を頂戴しました。
その時の小刀はそれ以来、今も私の懐に収まっております。

毎夜研がれ、今となっては刃も細く薄くなりました。
高貴な方々の護りには使えませんが、まさに己の護り刀となっております。

 

 

 

 

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14 件のコメント

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    直ぐ手が出るし、文女官と言う感じではありませんものね(o^-')b
    コモの新たな一面が出てきて面白そうです(^人^)

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    心の芯も真っ直ぐで太いチェ尚宮。見る人が見ると分かるのですね(*^ω^)ノ
    皇宮の守り刀は必然的な出合いで花開いたんですね♪
    やっぱり、チェ尚宮格好いい~!こんな女子に成りたっかった(*≧∇≦)ノ

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    さらんさんの作品は暫くお休みされるのかななどと思っていましたが、早々の復活、作品の連投♥もう嬉しいです!
    観れるのは嬉しいのですが、あまり無理はなさらないでくださいね。
    チェ尚宮の若かりし頃のお話良いですね!
    これからタイトルにある「憂鬱」がどの様に繰り広げられるのか興味津々です。
    PS作品ラストに有るブログ村のバナー写真(表現間違ってたらすみません)がいつもそのストーリーに合ったものになっているのがまた好きです。さらんのナイスなチョイスにまた感心です。
    個人的にもチェ尚宮とヨンの絡みでのこの腕組みシーン本当に好きでした。

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    体幹だけでなく心の芯もしっかりしているから選ばれたのですね
    託された刃を今も大切に研ぎ続けて、いつか誰かに引き継ぐ為に
    自身の人生を捨てて高貴な方の人生を護る
    運命とはいえできる事ではないです
    いつか尚宮が幸せと思うことが訪れますように…

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    重要人物であるチェ尚宮
    彼女が現在の立場になるまでのバックグラウンドはドラマでは描かれなかったので、興味深い です。
    さらん嬢の妄想(笑)いや想像力でエビソードがどこまで広がるか…今から楽しみにしています!

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    >mayuさん
    コメありがとうございます❤
    チェ尚宮様、という切り口で、またもイムジャカップルとは
    別のお話になりましたが。
    うん、ただ座って日がな一日書架整理は、無理ですw
    この後、私の愛するキャラが出てきます。
    それが可愛くなければ、この話は台無し。
    登場ドキドキします。伝わると良いな!!
    宜しければ、また覗いてみて下さい❤

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    ヨンも頭のあがらないチェ尚宮、それはそれは隠れファンが多いと思いますよ~。私もその一人ですもの(笑)
    お話楽しみです

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    >ののさん
    コメありがとうございます❤
    そうですね、小刀ではなく、伝家の宝刀。
    まさにヨンに受け継がれていますw
    チェ尚宮様、何気に大物ですからね。
    徳興君にも府院君にも、しらーっと会いに行けちゃうしw
    すげー!と思います。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    >らいかさん
    コメありがとうございます❤
    蛍袋の時、ヨンの声が聞こえているのに
    それを文字で取り出せないことに驚き、
    一気に燃え尽きてしまいましたがww
    もう完全復活、問題なしです。
    最近、バナーpicのお褒めもいただけて
    恥ずかし嬉し❤
    見ただけで「ああっ!ここ」と思う写真を
    選ぶのが、また楽しいです。
    ヨンの威を借りて、お話盛り上げる所存ww
    大好きだから、ページにもたくさん写真乗せたいのですが
    それやると自分のお話に熱中できません。
    ヨンを見ているだけで幸せで、
    え?こんな駄文読まなくてもいいよ、という
    そんな気持ちになってしまうのです。コワ!
    だから、1シリーズに1つだけ。
    出来る限り、イメージに合ったものを。
    逆にPic探し中に、あまりに素敵なものを見つけそれに合わせてお話ができる事も・・・
    本末転倒じゃーん。です。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    >あみいさん
    コメありがとうございます❤
    そうですね、チェ尚宮様の心持は
    ヨンに引き継がれている部分が大きいと思っています。
    いつか、恋をしてほしいですね。
    ヨンみたいなのじゃなく、大人の、想いあう恋愛。
    誰と!!ってところですが。
    ここまで、イムジャカップルとは離れた話が
    続いているのですが、
    理由も含め、あとで皆様へお伝えせねば、と
    思っています。
    今日はこの後、続き+皆様へで
    いっぱいいっぱいUPしてしまいますが。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    >まあもさん
    コメありがとうございます❤
    自分の妄想力を信じてw
    いや、妄想力は明日の活力です、まあもさま❤
    月曜日だって、仕事の空き時間、脳内の
    OSTが鳴れば、ヨンが勝手に話し出します。
    まあ便利!←バカミターイ(゜д゜;)
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    >mirukuさん
    コメありがとうございます❤
    やはり!隠れボス・チェ尚宮様。
    これはえらい方に、手を出してしまいましたw
    恋愛もさせてあげたいし、全くの裏話も書きたい。
    欲望は膨れるばかりです。
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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    イ尚宮さまが発掘したんですね。
    おてんばな娘チェ奏を武閣氏に入れたんだ。後の隠れボスを・・・。
    動くのが好きなんだからよかった。
    小刀が守り刀・・そう言えばウンスはヨンに貰った小刀どうしたんだろう?

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    >イタkiss大好きさん
    コメありがとうございます❤
    もう、成るべくして成ったとしかww
    小刀、あの赤い小刀ー
    私も気になっています。
    今でも挿してるのかなー、足に、とか。
    私設定では、挿していないんです。
    ウンスオンニ、あんまり刀捌きの才能なさそうだしw
    よろしければ また覗いてみて下さい♪

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