CATEGORY ■紅蓮・序【長編】

紅蓮 | 序・9

    翌朝、寅の刻前。 北方の朝は、未だ明けぬ。 春の明け方の空気は花の香を漂わせ、夜露を含んで地に近く沈んでいる。 そうか、春の花の香。 いや。夏にも、秋にも、冬の花にもあなたの香がする。 沈丁花…