CATEGORY ■都忘れ 【長編】

都忘れ | 15

    宅の門をくぐると、小さな横顔が目に飛び込んできた。 寒い庭で野菊の前にしゃがみ込み、黄色い花を指先で揺らす姿。 それを見るだけでこれほど胸が痛むものを。 「戻りました」 少し離れて掛けた俺の声…