CATEGORY 春波

一服処 | 春波・終篇(壱)

    春の夜気には鋭さがない。 寝屋の窓を開けるには早くとも、格子の隙間から月光と共に静かに部屋に忍び込む。 腕の中の寝息も、真冬の頃より穏やかに繰り返す。 昼の碧瀾渡、川岸に打ち寄せていた春波のよ…