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2016 再開祭 | 孟春・後篇 〈 風邪 〉

    こん、こん。 咽喉を絞る乾いた咳が、船の甲板から北風に飛ばされ川面を渡る。 せめて抑えてと思ったが、この方の耳を誤魔化せる訳もない。 鳶色の目が素早く此方を見上げ、避ける間もなく小さな手が伸び…